地元の産業界からは電力の安定供給や料金値下げに期待する声が上がった。一方、稼働に反対する市民団体は事故に備えた住民避難計画が担保されていないとして、反発を強めた。

 合格を見据え、島根県内の商工、経済8団体は、開会中の松江市議会に早期再稼働を求める陳情を提出。原発は脱炭素社会の実現に必要な安定電源で、新型コロナ禍で地域経済が疲弊する中、電気料金の値下げにつながり「地域の活力を早期に回復する」などと訴える。

 提出団体の一つ、県鉄工会の児玉泰州理事長は再生可能エネルギーの普及に伴い、電気料金に上乗せされる「賦課金」の負担が増していると指摘。生産量で全国2位を誇る県の鋳造関連産業発展のため「安価で安定的なベースロード電源が必要だ」と話し、県経営者協会の久保田一朗会長も「大きな転換点」と手続きの前進を喜んだ。

 今後、地元同意手続きが焦点となる中、脱原発団体は15日、松江市内で一斉に抗議運動を展開。

 県庁前で「原発ゼロをめざす島根の会」の山崎泰子共同代表(59)は「審査合格で再稼働へのハードルが一つ低くなった。再稼働が恐ろしくてたまらない」と強調。

 「島根原発・エネルギー問題県民連絡会」はJR松江駅前で「再稼働反対」のプラカードやのぼりを掲げ、事務局を担う芦原康江元松江市議(68)が「避難計画に実効性がなく、住民合意のない再稼働は認めない」と、市民に原発の危険性や避難計画の不備を訴えた。