少子高齢化の進展で65歳以上の高齢者が増え続ける中、政府は労働力や社会保障制度の担い手を確保しようと元気な高齢者の就労に力を入れる。今年4月には改正高年齢者雇用安定法が施行され、希望者が70歳まで働ける機会の確保を企業の努力義務とするなど「70歳まで現役」の社会が到来しつつある。

 厚生労働省などによると、寝たきりや認知症にならずに生活できる「健康寿命」は、2016年時点で男性72・14歳、女性74・79歳。現在でも高齢者の4人に1人が働いており「60代はまだ若手」(同省幹部)なのが実情だ。

 改正法では、定年延長や継続雇用で65歳までの雇用を企業に義務付ける一方、それ以降は、フリーランスを希望する人への業務委託や、自社が関わる社会貢献事業への従事も含めた就労環境の整備を求めている。

 医療や介護といった社会保障費は伸び続け、これ以上現役世代の負担を増やすには限界がある。70歳まで収入を得られるようにすることで、制度の支え手になってもらう効果も期待する。

 年金の仕組みは22年4月から変わる。受け取り開始の選択肢を75歳まで広げ、遅らせると受給額が増える。働いて収入がある高齢者の年金を減額する「在職老齢年金制度」は就労意欲を損ねているとの指摘があるため、対象者を減らす。

 一方で、介護サービスを受ける人は増加。65歳以上の高齢者が支払う介護保険料の月額は今年4月から全国平均で初めて6千円を超え、負担が重くなっている。