島根県内で「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」と「日本紅斑熱」の患者報告数が増加傾向にある。どちらもマダニにかまれることで感染する。森林や草むらなどマダニが生息する場所に入るときは肌の露出を減らし、かまれないよう予防することが重要だ。 (大迫由佳理)
SFTSはウイルスを保有するマダニにかまれることで起きる。感染した場合、27%が亡くなるという報告もある。6日~2週間の潜伏期を経て、発熱、下痢、嘔(おう)吐(と)などが生じる。県内でも過去に重症化して死亡するケースがあった。有効なワクチンや治療法はなく、対症療法のみ。県内の今年の患者報告数は10人(9月5日現在)で、過去最多だった2019年の年間報告数8人を既に上回る。
日本紅斑熱もマダニを通して体内に入った細菌によって起きる。かまれて2~8日ごろから、頭痛や高熱のほか、発疹が出るのが特徴。早期に使うことで重症化を抑える抗生剤はあるが、使用が遅れると死に至ることもある。
県内では日本紅斑熱は、感染症法に指定された1999年から2019年まで毎年平均9人の患者報告があったが、昨年は29人と過去最多となり、今年は9月12日までで24人の報告がある。毎年9、10月に増える傾向があり、今年は過去最多を上回るペースだ。
県保健環境科学研究所によると、県内に分布するマダニは15種類程度。イノシシや鹿などの動物に付着して移動する。藤沢直輝主任研究員(34)は「近年は人の生活圏に野生動物が近づくことも多く、自宅周辺にマダニがいる可能性がある。秋もマダニの活動が活発になるため注意が必要」と話す。
日々農作業をする人はもちろん、コロナ禍のキャンプブームで野山に出掛ける人も注意が必要だ。
予防法はかまれないよう、対策を取るに尽きる。野山や田畑に出掛けるときは、長ズボン・長袖を着て、手袋や帽子なども利用して肌の露出を減らし、マダニに効く防虫スプレーも併用する。帰宅後は体をはたいてマダニを払い、上着や作業着などは家の中に持ち込まないようにする。すぐに入浴し、吸血されていないか確認することも大切だ。かまれたときは無理に自分で取ろうとせず、皮膚科を受診して除去してもらう。
藤沢主任研究員は「マダニにかまれたら、体調に変化がないかに注意して、発熱などの症状があれば医療機関を受診してほしい」と呼び掛ける。