TVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン 特別ダイヤ版』(C) TOMY (C)プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所
TVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン 特別ダイヤ版』(C) TOMY (C)プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所

 2018年に放送され、いまなお熱狂的ファンを持つテレビアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』(第1期)が、4月5日から再編集版『新幹線変形ロボ シンカリオン 特別ダイヤ版』として帰ってくる。今年1月、放送決定を告知した公式Xは47.9万表示を記録。SNSでは「激アツ!最高すぎる「“無印”シンカリオン復活とか神すぎ…」といった歓喜の声が上がると同時に、「再編集…切り抜き的な?」「エヴァ回どうなる?」など物語の行方に関心を向ける声も相次いだ。多くのファンを抱える人気作を今、再編集する狙いとは何か。再編集版の中身とは。制作陣がその舞台裏を明かした。

【予告動画】新幹線変形ロボ シンカリオン 特別ダイヤ版

■待ち望まれていた「無印」シンカリオン

 「チェンジ!シンカリオン!」。その掛け声とともに、実在の新幹線が巨大ロボットへと変形する。2018年に放送を開始したテレビアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』は、ジェイアール東日本企画、小学館集英社プロダクション、タカラトミーの3社原案による壮大なプロジェクトだ。これまでにアニメシリーズ3作(『新幹線変形ロボ シンカリオン』『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』)と劇場版が展開されている。

 『シンカリオン』シリーズは、2015年にキャラクターとして発表した後、タカラトミーの鉄道玩具「プラレール」シリーズから商品を展開するところから始まった 。実在の新幹線が精緻に変形するギミックは瞬く間に子どもたちの心を掴み、その玩具のヒットを受けて満を持してアニメ化。鉄道ファンを唸らせる細部へのこだわりと、運転士に選ばれた子どもたちが正体不明の敵に立ち向かう王道のストーリーが融合し、子どもから大人までを虜にする社会現象を巻き起こした。

 今年1月、その「原点」であるテレビアニメ第1期の再始動告知への異例の反響に、タカラトミーの長沼豪さんは「うれしい悲鳴でした」と顔をほころばせる。

「視聴者の皆様がこれほど待ち望んでくれていた事実は、我々の自信にもつながりました。当時見ていた子どもたちも今は中高生。彼らにとって『シンカリオン』が良い思い出として心に残っていることを知る機会になりました」(タカラトミー マーケティング課・長沼豪さん)

 だが、ファンが抱く純粋な疑問がある。なぜ今、完全新作ではなく「再編集版」なのかという点だ。

 背景にあるのは、プロジェクトの大きな節目だ。2015年に玩具からスタートした『新幹線変形ロボ シンカリオン』は、2025年に誕生10周年を迎えた。このアニバーサリーを機に「次なる10年への再スタート」を切り、最新技術を投入した玩具新シリーズの展開も決定。

 一方で、テレビアニメ第1期の放送から7年が経過した今、視聴者の世代交代も進んでいる。当時のファンが成長していくなかで、現在のメインターゲットである4~6歳の子どもたちにとって、原点である第1期は未視聴のコンテンツとなっていた。

「根強い支持がある作品だからこそ、次世代の子どもたちにも視聴機会を広げたい」というプロジェクト側の狙い。しかし、かつての24分枠に対し、今回は12分という限られた放送枠となる。「作品の継承」と「放送枠」。両者を成立させるための手法として選択されたのが、池添隆博監督自らがシーンを選定し、物語の要点を抽出する「再編集版」という形態だった。

■泣く泣くカットも…「濃縮」で見せるシンカリオンの神髄

 1話24分から12分へ。この短縮には、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視する現代の子どもたちに、短尺版の方がフィットするのではないかという戦略的な狙いもあったという。

「7年前と比べ、SNS動画の普及により、子どもたちが長尺のコンテンツをじっくり視聴するハードルは確実に上がりました。そんな今の時代だからこそ、短尺版が受け入れられるのでは…という想いもありました」(タカラトミー マーケティング課・長沼豪さん)

 しかし、半分近くを削ぎ落とす作業は困難を極める。その中でタカラトミーが譲らなかったのは、「新幹線が走るシーン」の維持だ。日本の技術の粋を集めた新幹線がロボットに変形するからこそ、この作品には「夢」が宿る。スタッフが現地取材を重ねて描き出した、現実とリンクする美しい背景やリアリティ。作品のアイデンティティとも言えるそのディテールは、可能な限り残したという。

 一方で、池添隆博監督が心血を注いだのは、ロボットバトルの高揚感とキャラクターの魅力の両立だ。

「子どもたちには、ロボバトルの迫力にワクワクしてもらいたい。そこへ至るドラマの前振りをどこまで凝縮できるかが一番の悩みどころでした。私の得意分野はキャラクターを立たせること。カット数が限られても、彼らの個性や可愛げが損なわれないよう細心の注意を払いました。その『熱』が伝わればうれしいですね」(池添監督)

 池添監督が用いたのは、ドラマの「起」と「結」に重きを置く構成だ。特徴である濃厚な「鉄道知識(鉄分)」をカットせざるを得ない部分もあったが、ストーリーの明快さは維持されている。

 もっとも、熱狂的なファンほど「オリジナルこそ至高」という心理に陥りやすいのも事実だ。かつて『機動戦士ガンダム』がテレビシリーズを劇場版として再編集した際も、同様の議論が巻き起こった。しかし、劇場版というコンパクトな入り口があったからこそ、膨大な話数という参入障壁を超え、新たなファン層が拡大した歴史もある。

 賛否両論を巻き起こしやすい「再編集版」。果たしてこの令和の時代に放たれる『特別ダイヤ版』は、視聴者にどう受け止められるのか。新たなファンを連結するための、重要な試金石となりそうだ。

■「スタッフ全員の愛を込めたことが、一番の核心」

  今回の『特別ダイヤ版』放送決定に際し、SNSでは「“原点にして神作”のひとつ」「ガチの名作」などの言葉が躍った。これまでにアニメシリーズ3作と劇場版が制作された本プロジェクトにおいて、なぜこの第1期はこれほどまでに愛され続けるのか。池添監督は「鉄道を愛してやまないスタッフたちの知識、妥協なくキャラクターを描き切った現場など、各セクションが役割を全うしたからこそ」と分析する。

「『好き』という気持ちを見つければ人生はもっと楽しくなる。そんな『生きる希望』はシリーズの大きな軸です。一番は『人として大事だと思うこと』を、皆さんと共有したかった。自分の子どもに見せても恥ずかしくないものをと、全スタッフが愛を込めたことが一番だと感じています」(池添監督)

 放送当時から「リアリティ」と「憧れや夢」を与えてきた。「実在の車両を扱う以上、嘘はつけない。偉大な新幹線を作り上げた先人への敬意を込めて制作に挑みました」という監督の言葉通り、子ども向けアニメの枠を超えた真摯な姿勢が、大人の鉄道ファンの心をも射抜いた。

「僕たちが伝えたかったことは、この第1期に集約されています。その想いは今も色褪せていません。当時見ていた方が、今では親になっているかもしれません。ぜひ今の世代の子どもたちにも、この物語を共有してほしい。想いを繋いでいきましょう。今回の放送をきっかけに、再編集していない『本編』も改めて楽しんでいただければ(笑)。また皆さんと『ないしょ話』ができる日を楽しみにしています」(池添監督)

 放送に合わせて、玩具も「次世代仕様」へと進化を遂げる。4月18日発売の新玩具「SGX」シリーズは、第1期のシンカリオンが新モデルとして進化したもので、変形機構をよりシンプルに見直した。シリーズを重ねて上がってしまった難易度を改めて見直し、初めて手に取る子がアニメのポーズを簡単に再現できるよう可動域を広げている。

 ファン待望の放送は4月5日(日)だ。再編集版『新幹線変形ロボ シンカリオン 特別ダイヤ版』は、テレ東系列の番組『トミプラワールド のりのりタイムズ!!』(あさ8時30分〜)内にてオンエアされる。12分という限られた尺の中で、名作がどう再構成されたのか。まずはその目で、新たな「特別ダイヤ」の仕上がりを確かめてほしい。

(取材・文/衣輪晋一)