失敗作の須恵器が並ぶ、八雲立つ風土記の丘で開催中の企画展「奇妙なコレクション」=松江市大庭町
失敗作の須恵器が並ぶ、八雲立つ風土記の丘で開催中の企画展「奇妙なコレクション」=松江市大庭町

 現代人は分からないことがあると、すぐにスマホで検索しがちだ。道端の花の名、ニュースの背景…。何でもすぐに調べ、回答を得られる便利さを享受しつつ、少しうんざりもする。一昔前は分からないからこそ思考し想像したが、現代はすぐに「正解」にたどり着けるが故に曖昧さが許されないようで窮屈なのだ。

 だからこそ、松江市の八雲立つ風土記の丘で開催中の企画展『奇妙なコレクション-大井窯の須恵器たち』を見て肩の力が抜けた。同市の大井窯跡群で出土した須恵器の失敗作が並ぶ。ぐにゃっとした𤭯(はそう)(小型のつぼ)、くっついた蓋(ふた)と杯(つき)など、それぞれ不完全さが個性的だ。

 成形してから焼くまでに十分乾燥できないと、窯の中で形が崩れることが多かったようだ。効率的に焼こうと須恵器をたくさん重ね、ひっついてしまったものもある。数々の失敗から工夫を重ね、祭祀(さいし)にも使われる須恵器ができたのだろう。

 この中途半端さを楽しむ余裕が情報化社会には大事なのかもしれない。先日講演を聞いたメディア史専門の佐藤卓己上智大教授は、情報があふれる時代には曖昧な情報にはすぐ反応せず、価値判断を保留する「ネガティブ・リテラシー」が重要だと説いた。それはすぐに正解を求めない、不確実性に耐える力なのだという。

 花の名もゆっくり知ればいい。失敗作の須恵器たちは、正しい形はどんなだったかを想像する時間をくれた。(衣)