国の重要無形民俗文化財で、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されている松江市鹿島町の神事舞・佐陀神能を伝承する子どもたちが、1年7カ月ぶりに演舞を披露した。新型コロナウイルスの感染拡大により発表の場がなくなる中で、感染症対策を十分に取って、同町佐陀宮内の佐太神社の御座替祭で舞った。伝統の灯を消さないようにと続けてきた練習の成果を、力強い動きに込めた。 (黒沢悠太)
舞を披露したのは「子ども佐陀神能教室」のメンバー。担い手の裾野を広げようと、佐陀神能保存会の若手らが2019年6月に始めた。市内の小中学生20人が、地元の鹿島公民館で練習を重ねる。
新型コロナの影響で昨年2月から公の場で舞うことはなくなった。佐太神社に奉納する9月の御座替祭も昨年は子どもの舞は見送られたが、今年は「舞台に立つ目標を与えたい」と開催に踏み切った。消毒などを徹底し、宣伝を控えて密集をつくらないよう配慮した。
この日は、子どもたち9人が「剣舞」「巫女(みこ)舞」「山神祭」を舞い、笛や太鼓の音に合わせ、ゆったりとした身のこなしの端々に、切れのある動きを織り交ぜた。剣舞を舞った池田悠都君(9)=朝酌小3年=は「緊張したけど、刀が下がらないことを意識して頑張った」と笑顔。山神祭を披露した平塚康人君(10)=佐太小5年=は「せりふが長くて難しかったけど、自分らしい演舞ができて良かった」と話した。
保存会の石橋淳一会長(50)は「次世代を担う子どもたちに大きな経験になったと思う」と手応えを感じていた。