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「しろがねの葉」第168回直木賞受賞記念 トークイベント要旨(Sデジオリジナル記事)

石見銀山を舞台にした「しろがねの葉」で第168回直木賞を受賞した千早茜さん(43)が16日、石見銀山遺跡の地元・大田市で、トークイベントに出演した。創作の裏話や作品に懸ける思いに触れ、石見銀山遺跡は「人間の想像力をかき立てる」場所と語った。以下、要旨。  ー創作のきっかけは。  2011年にプライベートで訪れた時、地元ガイドから、石見銀山に住む女性は生涯で3人の夫がいたと聞いた。銀山で働く男性は、それくらい短命だったということ。「夫を3人も看取った女性はどんな人生だったか。どんなことを考えるのか。いつか書いてみたい」と思った。 会場では、島根県内外のファン約700人が耳を傾けた  ー実際に執筆するまでは時間差があった。  身近な編集者に話したが、あくまで「お話のかけらで、種」だった。訪問当時、私は31歳で人間の一生を考えられず、すぐには書けないと思った。女性を落ち着いた目で見る必要があり、技術力も上げないといけない。  漠然と50代になれば書けるかもしれないと思っていたところ、19年頃に新潮社の編集者に取材着手を促された。連載の予定を入れられ、20年春頃に連載が始まった。無理矢理書かされたようなものだった。  ー自身初の時代小説だ。  作品の雰囲気やテーマは、毎作変えたいと思っている。連作や短編小説など、これまでも初めてのことをやってきた。  「時代劇は一生やらないかもしれない」と思っていた。時代背景を説明するナレーションのような文章は、歴史の結末を知っている現代の私たちの声だと思い、冷めてしまう。  私は、その時代に生きた人たちの目線で書きたいと思った。小説とは1人1人の目線に立って別人の歴史を追体験できるものだ。教科書の歴史は支配者の歴史であり、子どもや女性といった力のない個人はどうだったか。市井の人々がどんな日常を過ごしたかの資料は少ない。しろがねの葉は私が感じたストーリーだ。 千早茜さんが「間歩カラー」と表現する黒色のワンピースと銀色の靴を披露  ー石見銀山の魅力は。  石見銀山の印象は「森」と「穴」。大森町の町並みはあるものの、ろう人形で当時の様子が再現されている訳ではなく、イメージが固定されていなかった。人間の想像力を信じてくれている気がして、自らの想像をいっぱい入れることができた。  タイトル「しろがねの葉」は、