新型コロナウイルス禍による自粛生活で、酒量が増えた人も多いようだ。肝臓専門医の加藤真三さんに、お酒の上手な飲み方を聞いた。
―良い飲み方とは。
「個々人のアルコール代謝能力(体質)や飲酒習慣によって適量は異なりますが、まず、飲むお酒に含まれる純アルコール(エタノール)量をあらかじめ知ることです」
―量を知る方法は。
「お酒に含まれるエタノール量(グラム)の換算式は『(酒の摂取量・ミリリットル)×(アルコール度数)÷100×0・8』です。例えば度数5(%)のビール350ミリリットル1缶に14グラム、度数15(%)の日本酒180ミリリットル(1合)に22グラム含まれます」
―最も死亡率が低い飲酒量は、ゼロでなく2日で日本酒1合程度との調査結果もある。適量は?
「国が推奨する『節度ある適度な飲酒』の量は、エタノール換算で1日20グラム程度まで。(欧米などの疫学調査を見ると)女性は、これの2分の1から3分の2が適量と言えます。ただお酒を飲まない人と寿命が同じ程度で良いと考えるなら、1日40グラム以下を目安にすると良いでしょう」
―休肝日は必要か。
「飲酒を適量以内に保つなら、必ずしも必要ではありません。ただし、1日のエタノール摂取量が60グラムを超える(15%の日本酒換算で3合、25%の焼酎換算で2合)ような大量飲酒はアルコール依存を高め、心身の健康を損ない、社会生活にも深刻な影響が出るので危険です」
―日本酒3合は飲み過ぎなのですね。飲むときの注意点は。
「アルコールには利尿作用があり、特に濃いお酒を飲むと脱水症状になりやすい。水分を十分に取って胃の中のアルコールを薄め、脱水症状にならないように気を付けてください」
―おつまみは食べた方が良いか。
「空腹な状態での飲酒は体に良くない。食道や胃粘膜、肝臓の細胞を守るために、適度に食べ物も口にしてください。ただし、肉類や揚げ物、糖質の多いおつまみの食べ過ぎは肥満の原因になるので注意してください」
―肝臓をいたわるためにできることは。
「この20~30年で、肝機能障害や肥満、脂肪肝の人が増えています。原因は主に摂取する栄養素の変化(肉類・脂肪・糖質の増加)と運動不足です。肥満とアルコールの相乗効果でアルコール性肝障害が進行し、肝硬変に至るリスクもあります。太っている人は生活習慣を改善して摂取カロリーと酒量を減らし、ウオーキングなどで運動量を意識的に増やして減量に努めてください」
■コロナ禍 依存に陥る人も
コロナ禍によるストレスから、アルコール依存症に陥る人もいる。加藤真三さんは「依存症を予防するにはまず、明るいうちから飲まないこと、適量以上の飲酒をしないことを原則にしてください」と話す。
飲酒を止められない場合は「全国にある依存症患者による自助グループ『アルコホーリクス・アノニマス(AA)』や断酒会に入ることをお勧めします」と加藤さん。
「患者の意思を尊重し、寄り添う姿勢がある専門医と共に、治療を進めるのも良いでしょう」
かとう・しんぞう 1956年徳島県生まれ。慶応大医学部卒。同大大学院医学研究科修了。医学博士。慶応大看護医療学部教授などを経て、同大名誉教授。著書に「肝臓専門医が教える病気になる飲み方、ならない飲み方」など。