北朝鮮が開発したと伝えられる新型ミサイルと日本
北朝鮮が開発したと伝えられる新型ミサイルと日本

 政府内で、北朝鮮が相次ぎ繰り出す新型ミサイルに関し「迎撃困難。日本列島への脅威は一段と高まった」(防衛省幹部)との危機感が広がっている。変則的なコースや極超音速での飛行を目指す新型ミサイルは、日本のミサイル防衛網を無力化しつつあるとの見方が背景にある。打開策は見いだせていない。

 脅威を与えたのは、北朝鮮が9月15日に日本海に向けて発射した弾道ミサイル2発だ。政府は変則軌道で飛行したミサイルの解析に手間取り、当初は排他的経済水域(EEZ)外としていた落下地点の説明をEEZ内と一転させた。自衛隊幹部は「海上自衛隊のイージス艦から発射する迎撃ミサイルで撃ち落とすのは難しい」と明言する。

 北朝鮮が9月28日に打ち上げたと発表した極超音速ミサイルにも、政府は懸念を強める。「弾道ミサイル技術を用いたもの」(加藤勝信官房長官)とみて分析を急いでいる。音速の5倍以上で飛来した場合、迎撃システムは突破されるとみる向きは多い。

 弾道ミサイルより安価で低空を飛行する巡航ミサイルにも神経をとがらせる。9月前半に発射された新型長距離巡航ミサイルを、日米韓3カ国は探知できず、後の北朝鮮報道で初めて知った可能性が指摘されている。楕円(だえん)と「8」の字形の軌道で約1500キロ飛行したと伝えられるこのミサイルに、日本は対処できるのか。防衛省幹部は「今のままでは守り切れない」と本音を漏らす。

 政府は当面、発動中の経済制裁で北朝鮮を追い込み、核・ミサイル開発を放棄させるとした従来方針を堅持する構え。だが成果は見込めず、手詰まり感が漂う。北朝鮮の核・ミサイル問題は進展を見ないまま、菅政権から岸田次期政権に引き継がれる。