文化人類学を学んでいた大学3年の夏休み、1968年のことだ。小松和彦(74)は埼玉県秩父地方の村で民間信仰を調べていた。年間の行事、人が生まれたとき、死んだときの作法などを聞き、その中に「オサキキツネ」の話があった。

 ちゃんと祭らないと自分の家の人や周囲の人について病気にしたり家の物を壊したり。そのキツネがいる家は村から排除される存在になっていた。「こんなつき物が信じられているのか」。その驚きがつき物、そして妖怪研究への道に導いた。...