岸田文雄首相が経済政策の目標に掲げたのは「成長と分配の好循環」だ。格差是正のために税金を使い、中間層が拡大すれば、消費が活性化して経済は安定的に成長するとみる。ただ新型コロナウイルス禍が引き続き景気の足かせとなり、実現への道は険しい。一方、立憲民主など野党4党は消費税減税による景気浮揚を訴え、衆院選の主要な争点となる。
岸田氏は成長戦略として、大学ファンドを10兆円規模に拡充し、科学技術立国を目指すほか、東京一極集中を解消する「デジタル田園都市国家」実現のため、デジタル分野のインフラ整備を推進。重要技術の海外流出を防ぐ経済安全保障の強化も打ち出した。分配政策では、子育て世帯への住居費や教育費の支援、看護師や保育士らの賃金引き上げなどを示した。
こうした成長戦略、分配政策の一部を、年内にまとめる「数十兆円規模」(岸田氏)の経済対策に盛り込む。新型コロナ禍で生活が苦しい世帯には給付金を支給する。
重要な経済政策の一つである税制改正では、株式の売却益など金融所得への課税を強化する方針を表明した。富裕層ほど所得総額に占める金融所得の割合が高く、安倍政権の政策「アベノミクス」による株価上昇で所得格差が拡大したとの反省が背景にあるが、増税だけに議論は曲折が予想される。
国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2025年度に黒字化する財政健全化目標の達成にはこだわらない姿勢を見せ、消費税は「10年程度は上げることは考えない」とする。国の台所事情は厳しく、経済対策の裏付けとなる21年度補正予算案や22年度予算案でめりはりを付けられるかどうかも焦点となる。












