紙の幅いっぱいに書かれた力強い字、丁寧な小ぶりの字、流れるような字、それぞれの「あんり」が忘れられない。

 学生だった2019年夏に、参院選広島選挙区で報道機関の開票速報アルバイトをした。開票台から約5メートル離れた場所で双眼鏡を手に、集計中の用紙をひたすら目視し「あんり」と記された投票用紙を幾度も見た。背後にある民意をこの目で感じた。

 大規模な買収事件が明るみに出て、バッジを外した河井案里元参院議員に1票を託したあの字の書き手たちは何を思っただろう。

 衆院選の投票率は、14年に最低の52・66%に落ち込むなど近年は50~60%台で推移する。

 損なっていく信頼を取り戻さないままの今、投票率の回復は期待できない。正直、投票に行きたくない人の気持ちも理解できる。

 それでも「頼みますよ」という1票を投じよう。投票に行かないことで、理想的な社会に近づく可能性も低くなるのだから。負託された政治家に胸を張れる言動が不可欠なのは、言うまでもない。(政経部・今井菜月)

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 衆院選の投開票まで1週間を切った。取材に走る若手、ベテラン記者が、自らの1票にかける思いをつづる。