衆院選8日目の26日午後、浜田市三隅町岡見の中国電力三隅発電所で働くパート男性(67)は「候補の顔も見ていないし、話も聞いていない」と島根2区の戦いに冷ややかな視線を送った。

 投票所に行けば自然と手が動いて「竹下」と書いてきたと話す故竹下亘氏の熱心な支持者だが、竹下氏の後継として自民党が擁立した新人の高見康裕候補の政策や人柄をほとんど見聞きしたことがない。

 高見候補の陣営は公示後、町内で2度、選挙カーを走らせたものの男性には街頭演説の場所や時間が伝わってこなかったという。

 報道各社の世論調査で他候補を引き離し、優勢との情報が伝わる高見候補だが、支える組織の士気は前回選までとは異なる。

 党地域支部や職域支部が街頭演説に動員をかけ、増刷分を含む約17万枚のリーフレットを配布してきたが、県議や市町村議がローラー作戦を展開して選挙区の隅々まで支持を訴えてきた、これまでのような場面はない。

 公示前のあいさつ回りで選挙区を2巡した高見候補が対面できたのは企業幹部や地域の世話役が中心で、末端への浸透が課題。選挙対策本部長の森山健一県議は「支援者に若い人を育てようという思いはあっても、つながりが薄い」と

竹下氏への恩義を背景にした前回選までとの熱量の違いを認める。

 陣営は得票率の目標を竹下氏の前回選実績(67・8%)を大きく上回る75%に設定。終盤は街頭演説での動員を徹底するが、高揚感を高められるかどうかは見通せない。

 高見氏を追いかける立憲民主党新人の山本誉候補は公示後、元衆院議員の亀井久興氏の支持者が援軍に加わり、益田市と津和野町で足がかりを得るなどして巻き返しを図る。

 ただ、選挙区を見渡すと実動部隊となる立民系市議は出雲に1人、浜田、江津、益田に各2人しかおらず、活動の範囲が限られる。山本候補が今春まで代表を務めた社民党県連は離党時に生じた軋轢(あつれき)が修復せず、自主投票を決めた。

 陣営は米価下落で打撃を受ける農家の不満が高まっていると分析。終盤にかけて戸別所得補償制度の復活に向けた訴えにさらに力を入れ、農村部で票の上積みを狙う。

 これまで県西部を拠点に活動してきた共産党新人の向瀬慎一候補は、山本候補と地盤が重なり、陣営スタッフによる支援の要請を断られるケースもあった。

 このため、終盤は有権者数の約4割が集中し、前回選で得票率が14・9%にとどまった大票田・出雲市で重点的に遊説。短いフレーズを多用して「原発ゼロ社会」の実現や米価下落対策を訴え、浸透を図る戦略を描く。 (取材班)

 

<島根2区・立候補者>

向瀬 慎一50 共産新

山本  誉64 立民新

高見 康裕41 自民新

  (届け出順、敬称略)