山陰両県の医療機関で、インフルエンザの予防接種の予約が取りにくい状況が生じている。全国でも同様で、新型コロナウイルスワクチンの製造が急がれ、世界的に滅菌に使うフィルターが不足し、供給が遅れているためだ。専門家が今季の流行を示唆し、需要も高まっている。厚生労働省は、12月までには解消すると見通している。
山陰中央新報社が、山陰両県の医療機関23施設に聞き取りした結果、60%がインフルエンザワクチンの入荷量が前年の8~9割にとどまり、26%がすでに予約を打ち切った。
松江市西川津町のかわつ田中クリニックは、10月に予約の受け付けを始め、2週間で入荷予定量に達した。田中賢一郎院長(38)は、「追加で発注したが、予約再開の時期は分からない」と話す。
厚労省は、本年度のワクチン国内供給量を例年並みの約2818万本と見込むが、10月末までの供給量は65%にとどまる。同時期に90%の供給があった前年と比較すると遅いものの、最流行期が始まる12月には、行き渡る見通しという。
日本感染症学会は、昨季に国内で流行が起きなかった影響で、日本人全体として免疫が落ちており、大きな流行を起こす可能性があるとしている。厚労省は、マスク着用や手洗いなどの予防策に加え、免疫を上げるのに有効なワクチンの接種を呼び掛けている。
(広木優弥)