同じ山陰でも地域によって食文化が異なる。鳥取県中部で生まれ育ったせいか幼い頃から親しんだのは、そばではなく、うどんやラーメン。なじみのラーメンスープが牛骨で取られていると知ったのは、ブームが始まった10年ほど前だった▼割子そばの味覚を知ったのも社会人になってから。戸隠(長野県)、わんこ(岩手県)と並ぶ「日本三大そば」の一つに挙げられる出雲そばは、その名前から発祥の地は出雲大社周辺かと思っていた。ところがそれは間違いだと、「松江そば組合」の景山直観副組合長から教わった▼江戸時代の1638(寛永15)年に信州松本城主だった松平直政が松江城主として移った際、連れてきたお抱えのそば職人により信州のそばが松江に伝えられたのが始まり。そばが大好物だった7代藩主松平不昧が鷹(たか)狩りに出掛ける際にそばの弁当を家来に作らせたのが、割子そばの原型という▼コロナ禍で観光客が激減する中、地元の人たちに出雲そばの魅力を再確認してもらおうと、松江そば組合は昨年夏、「松江そば屋めぐり『出雲そば』発祥の地・松江すたんぷらりー」を開催。市内3店を巡った先着100人に組合共通食事券をプレゼントする企画は大好評で、景山さんは「出雲そばは松江郷土料理の宝だと思う」と話す▼自分好みの味覚を求めて食べ歩くのも「そば通」の醍醐味(だいごみ)。きょうのお昼は宝を探して歩いてみようか。(健)