パン、牛丼、冷凍食品、コーヒー…。身近な食品に値上げの動きが広がっている。原油高騰によりガソリン代や電気料金などの値上げが加速しているのに加えて家計を圧迫する。生活の周りにインフレが押し寄せてくる気配だが、公式の統計はまだデフレから脱し切れていない▼「一体、どこを見ているのか」とお上の統計にかみつきたくなるが、本格的な影響がどこまで広がるか。コロナ禍不況にインフレ到来のダブルパンチだけは願い下げにしたい▼総務省が公表した9月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年比0・1%上昇とほぼ横ばい。世界的なコロナ禍からの経済回復で主要国では消費者物価が急上昇してインフレ懸念が高まっているのに、「日本だけメーターの針が壊れているかのようだ」と民間エコノミストの熊野英生氏▼本年度0%という日銀の消費者物価見通しも国民の肌感覚と懸け離れている。デフレ脱却に向け政府と約8年前に交わした2%の物価上昇の目標を維持する日銀にとって、本年度も未達を「告白」するようなものだが、なおも目標にこだわる▼インフレの足音が聞こえてくるのに、あえて物価を上げようとする日銀の神経が解せない。コロナ禍で傷ついた経済を立て直すため、金融を緩和する物価目標の必要性を強調するが、火に油を注ぐような結果にならないか。インフレを予防してこそ「物価の番人」なのに。(前)