子ども給付の想定される支給方法
子ども給付の想定される支給方法

 与党が経済対策の柱となる18歳以下の子ども向け給付で、現金とクーポンを組み合わせ10万円相当とすることに合意した。ただ一律支給にこだわる公明党と、ばらまき批判を避けたい自民党の間では所得制限を巡って擦れ違いが残る。高所得層を含めた現金給付は貯蓄に回る部分が多いとされ、景気浮揚効果を疑問視する見方も根強い。

 「持ち帰ったわけだから、相談しないと結論は出せません」。9日の国会内。自民から所得制限案を突き付けられた公明の石井啓一幹事長は記者団にこう語った。

 8日の与党協議前、公明は全額現金での支給を求めていた。ただ現金のみでは景気刺激効果が薄いとの指摘もあり、徐々にトーンダウン。竹内譲政調会長も「現金給付で実施する」としたツイッター投稿を削除した。

 衆院選公約で10万円「相当」としていただけにクーポン組み入れを受け入れるのは難しい選択ではなかった。石井氏も「元々、現金とかクーポンとかの組み合わせでやるとは言っていた」と記者団に明かした。

 「富裕層の子どもにまで配れば、ばらまきと批判される恐れがある」(政府関係者)。政府と自民内には当初から、一律の現金給付に慎重な意見があった。13兆円近くをかけて昨年実施した国民1人当たり一律10万円の特別定額給付金は、家計簿アプリのデータに基づく民間の分析によると、少なくとも7割が貯蓄に回った。財務省幹部は「今回は困っている人に対象を絞るべきだ」と強調する。

 浮上したのが、世帯主の所得に応じて子どもの中学卒業まで支払われる児童手当の仕組みを活用する案だ。振込口座を新たに登録する必要がない児童手当に連動させれば、申請の手間を省いた「プッシュ型」の早期支給につなげやすい。

 中学卒業後、18歳までの高校生らは児童手当の対象外のため手続きが必要になるが、所得制限を年収960万円にまで広げれば大半の子どもが対象となり、公明の理解も得られると踏んだ。

 公明の山口那津男代表は9日の記者会見で「親の所得で子どもを分断するのは望ましくない」と一律支給を強調。一方で、ある公明幹部は「一律、一律と突っ張るべきではない。参院選でしっぺ返しを食らう」と懸念も漏らす。

 政府は過去にも経済危機時などに幅広い対象への給付を実施してきたが、その経済浮揚効果には疑問の声も多い。

 安倍政権は消費税増税後の消費冷え込みを受け、14年度の補正予算に盛り込んだ自治体向け交付金を活用しプレミアム付き商品券を全国で発行したが「消費の押し上げ効果が弱かった」との民間シンクタンクの分析結果がある。麻生政権がリーマン・ショック後の経済対策として08年度の補正予算で実施した定額給付金も、内閣府の分析では消費に回った分が64・5%(1世帯当たり平均)にとどまった。

 第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、子育て世帯は教育や住宅ローンの返済などへの支出が多く、臨時の収入は貯蓄に回りやすいと分析。「国が支えるべきは、お金が無くなった困窮世帯だ」と指摘する。別の民間エコノミストも「景気を上向かせるには、1回限りの給付金ではなく、経済成長による持続的な賃上げが欠かせない」と強調した。