瀬戸内寂聴さんの訃報を受け、徳島県立文学書道館に設置された記帳台で手を合わせる人=12日午前、徳島市
瀬戸内寂聴さんの訃報を受け、徳島県立文学書道館に設置された記帳台で手を合わせる人=12日午前、徳島市

 作家で僧侶の瀬戸内寂聴さん(99)の訃報を受け、出身地の徳島市や、自宅のある京都市などゆかりの地で12日、哀悼の動きが続いた。各地の書店では追悼コーナーを設置。ファンらから「優しい人柄だった」「もっと元気に活躍してほしかった」と面影をしのぶ声が上がった。

 瀬戸内さんが名誉館長を務めた徳島市の徳島県立文学書道館は12日に記帳台を設け、手を合わせる人たちの姿が見られた。瀬戸内さんから寄託された資料を展示する記念室は、休館日の15日を除き、記帳台を置く21日まで無料で観覧できる。

 約20年前に京都市の自宅「寂庵」で会ったことがあるという徳島市の公務員藤岡値衣さん(61)は記帳台を訪れ「悲しくて信じられない。話すと、ほっとする優しい方だった」と悼んだ。富永正志館長は「100歳の記念展を開く予定だった。気さくで自由奔放に生きてきたイメージそのもの。功績を振り返ってもらえれば」と惜しんだ。

 東京都中央区の八重洲ブックセンターも12日までに入り口に特設コーナーを作り「追悼 瀬戸内寂聴さん逝く」と記したポップを囲むように小説「女徳」や「はい、さようなら。」といった法話をまとめた本を並べた。

 瀬戸内さんがサイン会を開いたことのある京都市の大垣書店烏丸三条店も入り口近くに著書を並べた。感謝の気持ちでいっぱいという店員三木健太郎さん(45)は「瀬戸内さんの生涯の物語に触れてほしい」と述べた。

 JR徳島駅前の紀伊国屋書店徳島店は12日までにコーナーを設け、著作のほか、サイン会で使った座布団や硯(すずり)も展示。宮城県塩釜市から旅行で訪れていた主婦青沼由紀子さん(52)は「心が折れそうな時に瀬戸内さんの言葉に励まされた」と悔やんだ。小沢康基店長(38)は「徳島を代表する作家。多くの人に手に取ってほしい」と話した。