政府は12日、新型コロナウイルス感染症対策本部を首相官邸で開き、流行「第6波」対策の「全体像」を決定した。今夏のピーク時と比べて3割増の入院患者を受け入れられる病床の体制を整備し、自宅で使える飲み薬を計約160万人分確保する。第5波では症状が悪化しても入院できずに亡くなるケースが相次いだことを教訓に、感染者の重症化と病床逼迫(ひっぱく)の防止を重視した。
岸田文雄首相は対策本部で「最悪の事態を想定した医療体制の確保、早期治療の強化により、感染拡大が生じても経済社会活動を継続できるようになる」と述べた。ワクチンの3回目接種や飲み薬実用化を進め、日常生活の回復を目指す。感染拡大局面に対策通り実現できるかどうかが焦点となる。
医療体制強化は感染力が第5波の倍となった場合を想定しつつ、ワクチン接種が当時より進んだことによる抑制効果も考慮。第5波で、入院先調整中の人も含めて最大約2万8千人の入院が必要となったことを踏まえ、約3割増の約3万7千人が入院できる体制を今月末までに構築する。病床は8割を稼働させる想定で約4万5千床を確保する。
医療機関ごとの使用率を12月から毎月公表して「見える化」する。コロナ用病床として申告されながら使用されなかったことが問題となったためだ。
ワクチンの3回目接種は12月に始め、来年3月をめどに企業や大学での職場接種も実施。飲み薬は年内の実用化を目指し、薬事承認を前提に計約160万人分を確保する。
患者の自宅に飲み薬を届ける環境を整えるほか、国産の飲み薬などの開発費用として最大約20億円を支援。投与実績のある中和抗体薬については、来年初頭までに約50万回分を確保する。
日常生活の回復に向けて、ワクチンの接種証明書を年内にデジタル化。無料検査を拡充し、健康上の理由でワクチンが接種できない人も都道府県の判断で対象とする。