1人の演者が複数の楽器を持ち替える「マルチ演奏」で知られる大田市立第三中学校(大田市水上町)の吹奏楽部が、23日の祖式町文化祭への出演を区切りに活動を休止する。今回で引退する3年生しか部員がいないため。ラストステージに立つ2人は、これまで数々の大会で優秀な成績を収め、テレビやインターネットでも注目された特色ある部活動の休止を惜しみつつ、練習に励む。 (錦織拓郎)
独特のスタイルは20年ほど前、少子化の影響で部員が減る中、当時の顧問が発案したのが始まりという。伝統は連綿と受け継がれ、人気テレビ番組で紹介されたほか、演奏風景が動画サイト・ユーチューブで話題を呼び、再生回数300万回超の投稿もある。コンクールの県大会、中国大会の「小編成の部」で最高賞の金賞もたびたび獲得。地域イベントでの公演を通じ、住民にも親しまれてきた。
一方、少子化で全校生徒数は今や12人に減少。吹奏楽部員は2008年に15人いたのが、近年は1桁にとどまっていた。今後、ある程度の新入部員がいない限り、再開は困難な状況だ。
バリトンサックス、バスクラリネット、チューバ、ユーフォニアムの四つの楽器を演奏する竹島世麗奈(せれな)さん(15)は「残念だが仕方ない。部員が少ない中でも地域のステージに立てることが、自分たちのモチベーションになってきた」と感謝の言葉を述べる。
部内では、今の自分たちにできる最高のパフォーマンスをする姿勢を代々、引き継いできたという。その理念通りテナーサックス、アルトサックス、フルート、ピッコロの楽器四つを奏でる北野倖弥(ゆきみ)さん(14)は「次が本当に最後の舞台。練習してきた成果を全部発揮したい」と意気込む。
祖式町文化祭は大田市祖式町の祖式まちづくりセンターであり、2人の登場は午前10時半から。当日はソロを中心にじっくり演奏したいと、曲途中で楽器を持ち替える早業は見られなさそうだが、学校の顧問らも演奏に加わりアニメのテーマソングやヒット曲などを披露する予定。