1年間に8回ものシステム障害を繰り返したみずほ銀行の頭取と、持ち株会社のみずほフィナンシャルグループ(FG)の社長、会長が退任することになった。システム運用の失敗で業務改善命令を受け、事態を混迷させた経営トップたちが責任を取るのは当然だ。

 システム障害は預金者や取引先の利便性を大きく損なう。企業統治を改革し、顧客本位の姿勢に転換しない限り、再発を防ぐことはできない。

 みずほ銀行は、第一勧業、富士、日本興業の3行が統合して生まれた。発足当初の2002年4月と、東日本大震災直後の11年3月にも大規模なシステム障害を起こしている。原因は技術的な問題だけにとどまらない。

 旧3行が勢力を争う体質は変わっていない。収益拡大ばかりに目が向き、取引先や預金者の利便性を高める意識も十分でなかった。富裕層や優良企業との取引を優先し、中小企業や個人取引にかける人員やコストを減らしてきた。人工知能(AI)やデジタル化を重視するのはいいが、目の前にいる顧客を大事にしなければ、銀行としての基盤が揺らぐ。

 4千億円を超える資金を投じた新システムを2年前に稼働させた。旧3行の大口取引先だったメーカーが開発を分担したことが、システム全体を複雑にした。参加したIT関連企業は大小合わせて千社に上るとされ、「オールジャパンによる開発」と言われた。しかし結局、この巨大システムを使いこなせなかった。

 みずほが立ち直るためには、まず「最新のシステムだから必ず安定運用できる」という過信を捨てることだ。障害が起きることを前提に、経営幹部や行員がとるべき行動を決めて、地道に訓練を徹底するしかない。トラブルが起きれば、経営トップまで直ちに伝わる風通しのいい態勢をつくることも欠かせない。

 多くの銀行では営業や経営企画部門が中心とされ、システム部門は傍流とみられてきた。みずほも例外ではない。こうした考え方は直ちに改めるべきだ。

 システム開発に携わった人材を、銀行や持ち株会社の首脳陣に加え、安定運用と危機管理に責任を持ってもらいたい。技術重視の姿勢は先端的な金融商品開発や業務改革にも役立つ。

 ライバルの銀行でシステム部門を経験した人材を経営陣に加えるのも一案だろう。旧3行のしがらみにとらわれない合理的な発想で、みずほのシステムの長所や短所を判断してほしい。

 今年2月末にシステム障害が始まった時点で、みずほ銀行の頭取は交代が内定していた。当初の対応は退任予定の銀行頭取が専ら担い、グループ全体を統括するみずほFGのトップはなかなか前に出てこなかった。

 持ち株会社と銀行が一体で臨む姿勢を当初から見せれば、もっと緊張感のある対応になっただろう。

 金融庁も障害の原因把握や分析に手間取った。金融庁や日銀などが協力し、メガバンクのシステムを点検する能力を高めるよう望みたい。

 現金自動預払機(ATM)や資金決済のシステムを安定的に稼働させるのは、銀行として当たり前のことだ。新経営陣に求められるのは、融資先や預金者を第一に考える姿勢だ。企業風土を徹底的に見直さない限り、信頼は取り戻せない。