政府は2021年度の補正予算案に、防衛費7738億円を計上した。補正予算案での防衛費としては過去最大となる。21年度の防衛費は当初予算でも5兆3422億円と過去最大になっており、合わせると6兆円を超える規模になる。

 防衛費は当初予算では対国内総生産(GDP)比で1%以内の水準をおおむね維持してきた。21年度は補正との総額で1%を超える見通しだ。

 軍備拡張と海洋進出を続ける中国や弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮など周辺情勢の厳しさを考えれば、一定の防衛態勢の整備は必要だろう。しかし、防衛費の膨張を続ければ際限のない軍拡競争に陥る。「聖域」とせず、厳しく精査する必要がある。

 第2次安倍政権が発足した12年以降、防衛費は増え続けている。特に最近目立つのが、補正予算でさらに積み上げていることだ。

 当初予算案と比べて国会での審議時間が短い補正予算案はチェックが甘くなる。当初予算を小さく見せかけて補正で増額する手法は「抜け道」とも言える。国会での精査を回避するような予算膨張は慎むべきだ。

 今回、岸田政権が決めた経済対策は新型コロナウイルス感染症で深刻な打撃を受けた国民生活や経済活動への支援が目的のはずだ。ところが「国民の安全・安心」という項目が設けられ、防衛省は「自衛隊の安定的な運用態勢の確保」の名目で予算を計上した。対策の趣旨から外れるものを、経済対策の規模拡大のために盛り込ませたと言えよう。

 補正予算案では南西諸島防衛を強化し、ミサイルや機雷の取得、哨戒機や輸送機などの主要装備品の調達も盛り込んだ。22年度当初予算に計上する予定だったものを前倒しした。過去に契約した装備品の支払いの前倒しも含めて額が膨らんだ。

 補正予算での積み上げで過去最大だったのは19年度補正の約4300億円だ。今回はそれを大きく上回る。主要装備品は防衛態勢の骨格に関わるものであり、本来は当初予算で計上すべきだろう。

 防衛省は22年度予算の概算要求で21年度当初比2・6%増の5兆4797億円を計上している。在日米軍再編の関連経費などは金額を示さない「事項要求」としているため、年末の予算案編成段階ではさらに増える見込みだ。

 一部を今回の補正で前倒しするが、防衛省は21年度補正と22年度当初予算を一体として「防衛力強化加速パッケージ」と位置付けており、22年度当初予算の概算要求も減額するわけではなく、防衛費は10年連続増となる見通しだ。別枠で米国と交渉している米軍駐留経費負担も増額する方向で、総体ではさらに膨れ上がることになる。

 防衛費を対GDP1%以内に抑える「1%枠」の方針は既に撤廃されているが、最近も1%以内に抑えられ、超えたのはリーマン・ショックでGDPが落ち込んだ10年度だけだ。だが岸田文雄首相は自民党の衆院選公約に「GDP比2%以上も念頭に増額を目指す」と明記した。

 防衛力の強化だけで周辺国の脅威に対処できるわけではない。逆に不測の衝突の恐れも生じる。何よりも取り組むべきは脅威を減衰させる外交的な努力だ。防衛力強化と財政健全化のバランスも考慮しなければならない。