障害に関係なく遊びを楽しんでもらおうと島根大大学院自然科学研究科2年の岩崎允宣さん(23)が視線入力訓練ソフト「EyeMoT(アイモット)」を活用し、パソコンを通じて目線だけでゲームやおもちゃを動かせるアプリを開発した。障害で手足を自由に動かせない子どもへの娯楽としてインターネット上で公開し、好評を博す。
アイモットは目の動きを検知する装置を通じてパソコン入力を訓練できるソフト。2015年に島根大ヒューマンインターフェース研究室の伊藤史人助教と学生が中心となり開発した。年々、研究室の学生が改良を続け、岩崎さんは4代目メインプログラマーとして昨年7月にパソコン用アプリ「EyeMoTボックスアプリ」を開発した。
新しいアプリには、画面に表示されたカードへ目線を送ると「おはよう」といった音声が出る機能や時間をカウントするタイマー機能などがある。パソコンに接続した扇風機や車のおもちゃを動かすこともでき、目線を向ける時間の長さによっても、さまざまな反応を起こすことができる。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)や脳性まひなど重度の障害がある子どもが操作の結果を体感する重要性を追究しようと思い立った。自分が目を向けることで音声が鳴ったり機器が動いたりすることを通じ、子どもたちは「できた」という成功体験を積みながら感覚に磨きをかけるという。
アプリは無償配布しており、視線を検知する装置やおもちゃを制御する機器「リレーボックス」を購入して使う。利用者は国内で1千人程度に上るという。9月には「日本デジタルゲーム学会夏季研究発表大会」で学生大会奨励賞に輝くなど高く評価された。
利用者の家族からは「子どもが自分のタイミングでおもちゃを動かせることで『自分が遊びの中心にいる』と実感を得ていた」「遊びを通じて喜びや悔しさという意思表示が見られるようになった」などの感想が寄せられている。
岩崎さんは今後も感想を取り入れて改良する考えで「より多くの人に利用してもらい、自己肯定感を高めてもらえるよう研究を進める」と思いを新たにする。
(中島諒)













