短歌 宮里勝子選

点滴に写る夕陽が輝けりすべてを忘れただ横たわる        松 江 中山カズ子

 【評】場所も病状もわからないが、一首の情景は伝わる。夕日の色も差し加減も日によって違うことや、点滴に写る茜色の輝きに自然の崇高な力を感じとる力をおもう。人間の限りある生に対して一瞬無我の境地にいたっている作者ではないか。体は横たわっているが心は働いている。上句と下句の統一がとれている。

これが妻か肯ひがたく斎場に白くて軽き遺骨を拾ふ        松 江 高木  和

 【評】あまりにも白くて細い...