バイデン米政権は来年2月から3月にかけて開かれる北京冬季五輪・パラリンピックに政府代表を派遣しない「外交ボイコット」を決めた。米国選手団は送る。新疆ウイグル自治区のイスラム教徒の待遇など人権問題が理由である。

 平和の祭典である五輪が米中対立の舞台となったことは残念だ。新疆や香港などでの中国の人権政策は厳しく批判されなければならない。だが「ボイコット」は、五輪の主役である選手たちにも影を落とすだろう。

 中国政府は米国の決定に「分裂や対立を引き起こそうとしている」と反発している。米国で将来開かれる五輪の外交ボイコットといった対抗措置をとるかもしれない。

 しかし中国の人権状況や拡張主義の動きには、米国だけでなく日本や欧州など国際的に反発が広がっている。中国は少数民族の権利を守り、国際社会のルールを守らなければ、世界で尊敬される大国にはなれないことを自覚すべきだ。

 米国の決定には英国、オーストラリアなども何らかの形で同調する可能性が報じられている。日本政府は米国追随の外交ではなく、人権など価値観を共有する米国との同盟関係、中国との歴史や経済の深い関係、何よりも五輪の理念を考慮して判断を下してほしい。

 冷戦時代の1980年モスクワ五輪を米国や日本など西側諸国が選手団も含めてボイコットし、84年のロサンゼルス五輪はソ連などが対抗してボイコットした。2014年ソチ冬季五輪では、オバマ大統領ら欧米首脳がロシアの同性愛に関する政策に反対し、開会式に出席しなかった。

 こうしたボイコットでも、問題のある開催国の政策が抜本的に是正されることはなかった。米国では超党派で反中国感情が強まっており、今回の決定は政治的なメッセージの性格が強い。

 バイデン大統領は12月9~10日に世界の国・地域を集めて「民主主義サミット」を開催する。台湾代表を招くなど、中国をにらんだ会議であることは明確だ。「民主主義国家」対「専制国家」という二つの世界への分断が進む事態は避けるべきだろう。

 人権問題で米中両国は譲れない。サキ大統領報道官が言ったように、米国からすれば人権は「米国人のDNAに組み込まれている」し、中国にとっては建国以来の共産党統治の根幹に触れるため、米国の要求には応じられない。

 一方で中国も「中国型の民主主義」との表現を使い、国情に合った民主主義を主張している。少数派の人権状況を見ると、これを額面通りには受け取れない。ただ声高に批判するよりも、静かに圧力をかけていく方が効果的だとも指摘される。

 バイデン大統領と中国の習近平国家主席は11月15日(米東部時間)、オンラインで3時間40分にわたり会談。衝突回避で認識が一致し、対話継続を確認した。人権や台湾情勢では対立したままだが、気候変動や通商、外交・安全保障での高官対話も始まり、トランプ時代の全面的な対立からは改善している。

 米中関係は再び冷却化し、緊張が高まる可能性がある。台湾情勢など日本にとって重要な安全保障問題もある。人権を筆頭に対立の種は多いが、米中はせっかく始まった対話を続けて関係悪化を回避してほしい。