

最近、車を運転しながら道路脇の公園によく目がいくようになった。遊具の充実ぶりや利用者の多寡、雰囲気などを無意識にチェックしている。
天気がよい休日の外出先は公園が多い。これまでさまざまな場所を訪ねた。親子が大集結するマンモス施設から街の一角にある小さな地域の公園まで。それぞれ特徴があり、子の反応を見ながら順繰りに回っている。
最近は人が少ないマイナーな公園がわが家の好みで、親子ともどものんびり過ごす。郊外には長いローラー滑り台など遊具が充実していながら、利用者が少なく、しかも景色もよい「穴場公園」がある。
はじめは献身的な家族サービスの色合いが大きかったが、そうでもなくなってきた。
島根県東部の中山間地域にある公園でのことだ。全長80メートルの巨大滑り台を滑りたい、とせがむ娘を連れて3階建ての高さはあろう階段を上る。ようやくスタート地点にたどり着いた途端、「こぁい。かえる…」とおびえる娘。「大丈夫、父ちゃんがおるけん怖くないよ」と熱心に説得する胸中は「正直(私が)滑りたい」から。家族サービスが自身の楽しみにすり替わっていた我を省みて、後続の親子に頭を下げながら遊具を後にした。
子どもとの生活が始まってから、独身時に興じた趣味に費やす時間は確実に減った。しかし、気持ちを押し殺しているわけではない。むしろ幼少期を追体験して楽しんでいるような感覚だ。
公園に限らず、ショッピングセンターでは堂々とおもちゃコーナーに入れるし、ゲームセンターに身を置いても不自然ではない。日中、真面目なふりして日中に仕事していても、頭の中では朝に子どもらと一緒に聴いたNHK教育テレビの童謡が無限に流れている。自宅で子どもと向き合うジグソーパズルやブロックも、家族が寝静まってから一人で完成を目指す夜もある。
三十路になって、再び幼少期の世界に触れるとは思わなかった。子どもらからのプレゼントだけれども、それも長く続く時間ではないとかみ締め、今日も公園探しにいそしむのである。
(報道部・多賀芳文)
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