これまでの新型コロナウイルスとの闘いでも経験したことのない事態である。重症者を最小限に抑え、救える命を守りながら、社会機能を維持するために政府、自治体、医療機関、企業、私たち一人一人が英知を結集し、総力を挙げたい。

 政府はオミクロン株の加速度的な感染の広がりを受け、新たに首都圏、東海、九州など1都12県にまん延防止等重点措置を適用する方針を固めた。短期間で全国一斉に拡大、18日の感染者が過去最多を更新し、3万人を超えるという感染力のすさまじさは、第5波までと全く別のフェーズと捉えるべきだろう。

 まず求められるのは医療逼迫(ひっぱく)の回避だ。オミクロン株は重症化しにくいと言われるが、思い込みは禁物である。感染者の急増に伴い重症者も看過できない数に達する可能性は大きいからだ。

 政府や自治体は、病床の確保とともに、飛躍的に増えるであろう無症状や軽症への対応として自宅や宿泊施設をどう活用し、そこにいる感染者の健康状態をどう見守っていくか、地域医療との連携体制を再点検してほしい。医療スタッフが不足した地域への応援も含め、医療資源の適切な配分もあらかじめ調整しておくことが欠かせない。

 今回の感染爆発で懸念されるのは、医療や社会活動を持続できるか、という課題だ。沖縄県では陽性者と濃厚接触者の増加によって、医師や看護師らが出勤できず、救急医療の受け入れを停止するなどの深刻な状況が生まれた。

 医療関係者のみならず、介護、福祉、ライフライン、交通、物流などで働くいわゆるエッセンシャルワーカーの欠勤が続出して業務が止まれば、市民の暮らしは混乱に陥る。交通や物流、警察、消防、教育の現場などに一部支障が出ている欧米の姿は、決して「対岸の火事」ではない。

 政府は、濃厚接触者の自宅待機を14日から10日に短縮、エッセンシャルワーカーは6日目の検査で陰性が確認されれば解除できるとするなど、隔離の条件緩和を進めてきた。感染者の分析を急ぎ、専門家の知見を仰ぎながら、ウイルスの特性を踏まえて柔軟に対応していくことが不可欠で、入退院基準の見直しも検討課題だろう。

 企業も一定数が職場を離れるケースを想定した実務的、実践的な事業継続計画(BCP)を策定してもらいたい。職場の集団感染を防ぐため、分散勤務やテレワークを利用した思い切った出勤者抑制、時差出勤などに一段と踏み込むべきだ。

 私たちも、昨年末にいったん緩んだ行動スタイルを考え直したい。「感染しても軽症だ」との楽観を捨て、感染しない、感染させないという基本に立ち、マスクの着用や手指の消毒、換気の悪いところでの会食を避け、混雑している場所への外出を控えるなど予防を徹底する必要がある。ようやく客足が戻りつつあった飲食店や観光業などは再び試練を迎える。政府や自治体は温かい支援の目配りをしてもらいたい。

 驚異的な感染力のウイルスだけに、試行錯誤で、臨機応変の対応に迫られるだろう。肝心なことは方針を転換する場合でも、その根拠も含め、政治リーダーが丁寧に説明していくリスクコミュニケーションだ。感染拡大防止と社会機能の維持の両立へ、危機に立ち向かう力が試される。