南太平洋の島国トンガで海底火山の大規模噴火が起きた。津波が発生し約8千キロ離れた日本にも押し寄せ、気象庁の対応の遅れもあり漁船転覆などの被害が出た。現地の被害は停電や通信網途絶のためよく分からない。政府は情報収集を急ぎ、必要な支援をすべきだ。

 トンガは日本と同様、火山の多い国だ。地球を覆うプレート(岩板)の一つが隣のプレートの下に沈み込む場所にあり、沈んでいくプレートの上面が溶けてマグマができ、上昇することで火山が生まれる。

 噴火したのは「フンガ・トンガ―フンガ・ハアパイ火山」。先月20日に噴火し、いったん活動が収まった後、日本時間の15日午後1時ごろ、大規模な噴火を起こした。衛星画像で見た噴煙の広がりは、関東平野を覆うほどの規模だった。

 首都ヌクアロファを含め現地との通信が途絶え、噴火や津波による被害状況はよく分かっていない。近くにあるニュージーランドのアーダン首相は16日の記者会見で、火山灰で水道水が汚染され、飲み水が必要だと支援の必要性を訴えた。

 日本では気象庁が15日午後7時すぎ「若干の海面変動が予想されるが、被害の心配はない」とする津波情報を出す。ところが同11時55分、鹿児島県奄美市で1・2メートルの津波を観測。16日午前0時15分に津波警報・注意報に切り替えた。

 気象庁の対応が揺れたのは「想定外」の津波だったからだ。津波の多くは海底で起こる地震によって発生する。地震の断層運動で海底に地殻変動が起こり、その上の海水を持ち上げたり引き下げたりする。その動きが周囲に津波として伝わっていく。

 それ以外にも、海底で起こる地滑りや今回のような火山噴火で発生することがある。

 1883年のインドネシア・クラカタウ火山の噴火では海底に直径8キロのカルデラができ、30~40メートルの津波が周辺を襲った。死者約3万6千人のほとんどは津波で亡くなったとされる。同国では2018年にも噴火に伴って津波が発生し、400人を超える死者が出た。日本でも伊豆諸島南部の海底火山、明神礁が1952年に噴火した際、約140キロ離れた八丈島で2メートルの津波が観測されたことがある。

 気象庁は遠方海域での津波発生に備え、さまざまな地震を想定したシミュレーション結果をデータベース化し、世界各地の地震記録や津波の観測データを加味して規模や到達時間を予測している。だが今回の津波はその想定を超えていた。

 15日午後8時ごろから太平洋側で潮位変化の観測が相次ぎ、予想された到達時間よりも2時間半早かったことから津波の特徴と合わないと判断された。サイパンなど途中の観測点の潮位変化も数十センチと小さく、予測担当者を悩ませたという。

 研究者の間には、噴火によって大気が振動する「空振」が関わっていたとの見方がある。検証を踏まえ、気象庁には津波予測の精度向上を目指してもらいたい。

 遠方で発生する津波の予測を巡っては到達時刻が予想よりも遅れるという長年の謎があった。東大地震研究所の綿田辰吾准教授らが海水の移動による海底の変形と海水の圧縮、重力の変動が原因だと2013年に解明する。今後も予測を改善する研究に期待したい。