老いづける吾と知りつつ娘(こ)の年のいつしか六十過ぎて驚く     江 津 安田 秀子

  【評】齢(とし)を取ると近眼になるのだろう。自分の老いゆきに気を取られて日を過ごすう ちに、身近なわが娘の齢をつい棚上げにしていたのだ。改めて思い返せば娘はもう60を 超しているはず。自他の関わりの一端がうまく詠いあげられた。

紅葉の水面(みなも)に映る川端に子芋を洗ふ媼のおりぬ          奥出雲 田部 益恵

  【評】紅葉に彩られた小川の景色に一点の動きが加わって、場面が鮮やかに浮かんで 見える。ただ、私としては結...