任期満了に伴う鳥取市長選が20日告示される。目下、市政の懸案は新築移転後の旧庁舎跡地活用と鳥取砂丘西側エリアの活性化。選挙戦で議論は深まるのか。論点を整理する。
(鳥取総局報道部・岸本久瑠人)
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旧本庁舎(鳥取市尚徳町)と旧第2庁舎(同市上魚町)の跡地活用を検討してきた専門家委員会の提言を受けた2021年10月。深沢義彦市長の心は既に緑地公園化に傾いていた。
提言は市民アンケート結果などを踏まえ、大規模災害時の避難、復旧活動拠点としても使える緑地公園▽屋内施設を併設した緑地公園▽学生らが自由に使える屋内施設▽多目的ホール-の4案併記。特に緑地公園を中心に検討を進める内容だった。
大きく分けると、市民の間では、巨額投資を伴う箱物整備に批判的な声と、美術館やホールといった施設整備を望む声が交錯する。将来の施設整備の余地を残しつつ、当面の投資を抑える公園化という選択肢は、おのずと導き出された。深沢市長は提言を受け「時代に合った市民が望むものを基本に、具体的な実現に向け庁内で検討したい」と回答。同12月に緑地公園化の方針を明らかにした。
▽周辺商店街に打撃
庁舎新築移転の決定から7年、現本庁舎(同市幸町)の開庁から2年を経て跡地の行方が固まったとはいえ、積み残した課題は小さくなかった。
市民の声が、公園化と施設整備に大きく二分されるのは、なぜなのか。
解体工事が進む旧本庁舎と旧第2庁舎の跡地はメインストリート・若桜街道沿いの中心市街地にあり、面積は計約8500平方メートル。JR鳥取駅まで1キロ、鳥取県庁まで400メートルで市民会館や鳥取赤十字病院が隣接する。いわば街中の一等地で市庁舎が去った今、代わりに集客力のある施設がなければ、周辺商店街にとっても打撃は避けられない。
県立博物館を借りなくても市美術展が開ける美術館、県立の梨花ホールより小ぶりで最新の音響設備を整えたホールを求める文化関係者もおり、施設整備の待望論が膨らんだ。県立美術館誘致の夢が破れただけに、なおさらだった。
一方、かつて庁舎新築移転を巡っては市民が賛否に割れ、住民投票にまでもつれ込んだ。反対理由の一つが巨額の投資。現地での耐震改修を支持した住民投票結果を覆して新築移転が決まり、実現した今も、箱物に批判的な声はくすぶる。
▽抽象的な答弁内容
緑地公園化の方針が示されたものの、にぎわい創出の具体策は見えていない。
2月定例市議会の質問戦で、深沢市長の答弁は「イベント開催による集客性や中心市街地の施設と連携した回遊性の向上などをコンセプトに進めたい」との抽象的な内容にとどまった。
市中心市街地活性化協議会の井戸垣泰志事務局長(鳥取商工会議所地域振興課長)は、中心市街地には既に鳥取城跡・久松公園やミニ動物園的な真教寺公園があることを念頭に「近くにも公園があり、自然と人が集まるとは考えにくい。イベントなど仕掛けが必須だ」と指摘。まずは市が具体策を示し、利用の機運を高めるよう注文する。
市民の間には、野外ステージを整備してコンサートなどに活用するアイデアもあるが、隣に病院があることを考えると、騒音の配慮が必要で、制約がありそうだ。キッチンカーが集まるグルメイベントを開いたり、小さな森のように木を植えてイルミネーションイベントに生かしたりしてはどうだろうか。
積極的に活用策を描き、にぎわい創出のあり方を探ることは、将来の箱物整備の可否や具体案の議論にもつながるはずだ。