バイデン米大統領と中国の習近平国家主席はロシアによるウクライナ侵攻後、初のオンライン会談で、停戦に向けた外交交渉への支持で一致した。しかし、習氏は米国主導の対ロ経済制裁には反対を表明した。
ロシアに大きな影響力を持つ米中二大国が対話を通じた和平の追求に合意した点は評価できるが、対ロ制裁で足並みがそろわず、早期停戦を後押しできるか、なお未知数だ。両首脳は今後も連絡を密にして協調をより深め、具体的な行動で和平の実現に努めてほしい。
習氏はウクライナ侵攻について「現在の事態を願わない」とし「当面の急務は対話、交渉を続け早く停戦することだ」と述べ、これまでより踏み込んだ表現で「停戦」に言及してロシアに自制を求めた。バイデン氏も外交解決への支持を強調した。
またバイデン氏は中国がロシアに物資支援した場合の「意味と結果」について説明し、対抗措置を警告した。習氏は「全面的で無差別な制裁に苦しむのは庶民だ」と述べ、世界経済を損なう弊害を挙げ、制裁に反対する姿勢を示した。
今後、中ロ間の貿易ルートが国際社会の対ロ制裁の抜け道となる可能性があるが、中国は制裁を妨害して効果を薄めてはならない。米側はロシアへの軍事物資の提供も警戒する。中国は戦火をあおる武器供与を決して行うべきではない。
習氏は米側に「ロシアとウクライナ双方の安全に関する憂慮をなくすべきだ」と求め、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大に対するロシアの懸念への配慮を促した。ロシア、ウクライナ双方と密接な政治、貿易、軍事関係を持つ中国として「中間的な位置」の確保を目指した。
2月初め、習氏はロシアのプーチン大統領と北京で会談し、「戦略的パートナーシップ」を確認して、米欧に中ロ結束を誇示。約3週間後に侵攻が始まった。結果的にプーチン氏を鼓舞した習氏の責任は重い。中国は中立的な立場を利用して、積極的に両国の仲介役を務めるべきだ。
バイデン氏と習氏は会談で、米中関係の安定・発展に合意し、習氏は「米中二大国は国際的責任を果たし、世界の平和と安寧のため努力しなければならない」と述べた。両首脳は相互理解と対立の解消を進め、世界平和の実現に努めてほしい。
習氏は「米国の一部の者が台湾独立勢力に誤ったシグナルを送っており、危険だ」と述べ、米台関係の強化の動きを批判した。バイデン氏は「一つの中国」の原則を守るとしながらも「一方的な現状変更に反対する」とくぎを刺した。
昨年来、日米の軍事関係者や保守派政治家らの間で「台湾有事」の恐れが取り沙汰されていたが、ウクライナ侵攻で再燃した。専門家の間では、国際社会のロシアへの厳しい反応を目の当たりにして、中国は台湾に武力を行使しにくくなったとの見方が優勢だが、日米などで有事に備えた防衛力増強の動きが強まる。
3月中旬、中国は公船を尖閣諸島の領海に侵入させ、空母を台湾海峡に派遣した。平和と安定を脅かす示威行為は慎むべきだ。習氏はバイデン氏に「中国は平和を主張し、戦争に反対してきた」と述べた。中国はアジアで信頼を回復するためにもウクライナ和平に真剣に取り組む必要がある。