安来市日白町の野路山に山桜を植え、長年にわたり憩いの場として手入れする角清延さん(85)たち地元住民が、関係者18人の名前を刻んだ石碑を建立した。病に倒れながらも山桜を気に掛け続け、2月上旬に亡くなった中心メンバーの男性の姿に心を打たれ「誰が関わったか知ってもらいたい」と整備の証しとして思い立った。山桜は今月末ごろ咲き始める見込み。石碑は花見客らに地道な取り組みの一端を伝える。 (桝井映志)
山桜は山頂付近の51アールに約260本植わる。かつては葉タバコ栽培が盛んだった地。その後、荒れていたのを見かねた角さんが2005年に家族らと苗木を植えた。花見客が増えるにつれ、下草刈りや車が通りやすいような山道の整備に携わる住民の輪が広がった。
男性は75歳で亡くなった地元の加藤昭彦さん。世話好きな人柄で「一番、力になってくれた」と角さんは振り返る。21年夏の大雨で崩れた山道の補修にも汗をかき、その後、病床についても山桜に思いを寄せた。
石碑は高さ57センチ、幅70センチで台座に載る。表に「野路山 山桜」の文字と植樹時期を記し、裏に角さんや家族、住民ら計18人の名前が並ぶ。角さんは「こういう人たちが植えたかと思ってもらえるだけでいい。ずっと長く人に来てもらえる場所になるといい」と願う。
活動は30~60代の世代にも受け継がれ、花見時期を控えた今月20日には山道を掃除した。その1人、角達也さん(61)は「花見客には『メルヘンのような世界だ』と言われる。ゆっくりと過ごせる環境をつくりたい」と展望した。
山桜へは、松江市との境界付近の出雲東部広域農道から野路農道に入るか、市境付近の国道9号から高清水神社を目指して南に進むと、案内看板がある。