「週刊・ヤッホー!」の初代司会者を務めたすやまとしおさん(左)と枡田史子さん(TSKさんいん中央テレビ提供)
「週刊・ヤッホー!」の初代司会者を務めたすやまとしおさん(左)と枡田史子さん(TSKさんいん中央テレビ提供)

 TSKさんいん中央テレビ(松江市向島町)のローカル情報番組「ヤッホー!」が今月12日の放送で終了した。前身の「週刊・ヤッホー!」の時期と合わせ、放送期間は25年半に及ぶ。番組のスタートから出演を続けた「すーさん」こと、タレントのすやまとしおさん(68)と、初代司会者だったアナウンサーの枡田史子さん(48)に、番組の思い出を聞いた。(Sデジ編集部・吉野仁士)

 

 「週刊・ヤッホー!」は1997年10月に放送を開始した。毎週土曜午後4時50分~同5時半に放送する40分の生放送番組で、コンセプトは、やまびこのように「呼べば答える情報テレビ」。司会のすやまさんと枡田さんの軽妙な掛け合いを交え、山陰各地の旬の話題を伝えた。

「週刊・ヤッホー!」の第1回放送時のすやまとしおさん(左)と枡田史子さん。視聴者投稿の受け付けがFAXのみという点に時代を感じる

 番組の目玉はすやまさんが各地で挑むロケ。水上スキー(ウェイクボード)やサーカス団との空中ブランコにまで挑戦し、体当たりでリポートした。名物コーナーも多く、すやまさんが合併前の山陰両県97市町村を回って、地域のお宝を探す「するぶの旅」や、番組の看板犬のチェリーとともに各地の飼い犬と触れ合う「チェリーの友だち100匹できるかな?」などが人気になり、山陰の情報バラエティ番組として浸透していった。

すやまさんが山陰両県の全市町村を回る「するぶの旅」(TSKさんいん中央テレビ提供)
「チェリーの友だち100匹できるかな?」では、すやまさんが看板犬のチェリーとともに、山陰各地を巡った(TSKさんいん中央テレビ提供)

 2016年7月からはリニューアルで番組名が「ヤッホー!」に。時間帯は毎週土曜午前10時25分~同11時45分の80分番組に変更された。19年4月からは午前10時55分~同11時50分の55分番組となった。

 出演者には新たに安来市出身のお笑い芸人、ネゴシックスさんや、お笑いトリオ「ロバート」の馬場裕之さんらを迎えた。これまでのロケに加え、馬場さんが料理の腕を披露する「産地直送クッキング」など、さまざまなスタイルで情報を届ける番組を目指した。25年間の放送回数は計1125回に上る。

ヤッホー!最終回の生放送の様子。終始、和気あいあいとした雰囲気の中で進行した(左からネゴシックスさん、馬場裕之さん、女優の水木彩也子さん、すやまとしおさん)

 

 ▼誰よりも番組を楽しむ

 ヤッホー!の最終回放送直前、番組の顔・すやまさんに25年の思いを振り返ってもらった。

インタビューに応えるすやまとしおさん。番組中と変わらず、陽気かつ丁寧に話してくれた

 ―最終回を迎えるにあたって、率直な思いは。

 25年間、長いようであっという間だった。山陰のすべての皆さんに力をもらってできた番組。スタッフや出演者にとっての大きな宝になった。元気と笑顔、明るさを少しでも届けていきたいと団結して頑張ってきた。私の体の80%ぐらいを占める大きな存在だったので、それが無くなると思うと感慨深い。

 

 ―すやまさんと言えば、いつも元気いっぱいで陽気なキャラクター。元気の秘訣(ひけつ)は。

 一番考えていることは、テレビだからではなく、自分が現場でその時間を楽しむこと。自分のありのままを出すことを心掛けてきた。家族でも誰かがにこやかにしているとみんなが笑顔になる。そんな温かい家族のような番組にしていこうと思っていた。

 「頑張れ」「もっとやれ」という応援をもらって、励みになった。まず自分が楽しまないと、周りは絶対に楽しくないと思う。

番組の醍醐味でもあった、すやまさんの体を張ったロケの様子。どんなことにも体当たりでリポートに挑むキャラクターが人気を博した(TSKさんいん中央テレビ提供)

 

 ―印象に残っていることは。

 やはり一番長期にわたって毎週ロケを続けた「するぶの旅」。3年以上掛けて、合併前97市町村全部を回り終えた時の感動、感激は今でもはっきり覚えている。すべての市町村の皆さんと触れ合い、これで山陰の皆さんと一つになれたという意識があった。自分でもよくやれたなあと思う。これも私の大きな宝物。

山陰全ての市町村を訪ねる「するぶの旅」の第1回放送。鳥取県の赤碕町(現在は琴浦町)を皮切りに、全市町村を3年以上掛けて回りきった(TSKさんいん中央テレビ提供)

 

 ―ヤッホー!はどんな存在か。

 親のような存在。自分が楽しむあまり周りに迷惑をかけることもあったが、出演者やスタッフが叱ってくれたり褒めてくれたり、背中を押してくれたりした。私が自由にやることができたのは周りの皆さんのおかげ。番組が私にいろんなことを教え、学ばせてくれた。自画自賛だけど本当にすごい番組だったと思う。たくさんのパワーをもらった。

ヤッホー!最終回の放送終了後、花束を受け取るすやまさん

 

 ▼すべての人に感謝

 続いて、放送開始から2008年まで司会を務めた、フリーアナウンサーの枡田さんに思い出を聞いた。

ヤッホー!への思いを話す枡田史子さん。放送当時の愛きょうとトーク力は健在

 ―ヤッホー!の終了を聞いて思ったことは。

 私が関わったのは最初の10年ほどだが、25年も続いたことに感謝しかない。開始当初は「数年で終わるのではないか」と言われたほど。すーさんが自由に動けるようにするため、自分なりに現場の雰囲気が明るくなるよう意識して司会をしていたことを思い出す。テンションの高い番組になった。番組を見てくれる視聴者の方と協力してくれる取材先の方、何より番組スタッフのヤッホー!に対する愛があったからこそ、長年続いた。そこに関われたことに感謝したい。

週刊・ヤッホー!のすやまさんと枡田さんは、息の合ったトークを展開する名物コンビとして知られた(TSKさんいん中央テレビ提供)

 ―番組で記憶に残るシーンは。

 犬のチェリーが印象深い。生後2カ月半のとても小さい頃に番組に来て、どんどん大きくなった。人なつっこく、スタジオで収録中、座っている私に飛び付いてきたことがあった。チェリーがいると自然と笑顔になった。また、動物と一緒に情報番組を収録するという、番組の自由な空気感が面白かった。

 ―ヤッホー!はどんな存在か。

 私にとってはまるで家族のよう。スタッフみんな仲が良く、いろんなアイデアを出し合いながら一緒に番組を作った。終了は少し寂しいが、絆がなくなるわけではなく、ヤッホー!の精神は受け継がれると思う。番組が新しくなる成長の過程だと思って前向きに捉えたい。

ヤッホー!の後の新番組について「これまでの山陰のローカル番組になかったものになるはず」と期待を寄せる

 

 ヤッホー!の後の新番組は4月9日(土曜)午後6時からの30分番組で、番組名は「SOUP(スープ)」。名前通り、かき集めた山陰の情報を食材に見立て、煮込んだスープのように、30分に凝縮した情報番組にする予定という。

 司会者はヤッホー!に出演していた馬場さんと、米子市出身のタレント山根千佳さんを中心に据え、若手ディレクターが企画した斬新なコーナーを打ち出していく。山村章之・番組プロデューサー(43)は「スープのような温かみがある、今の時代のニーズに合ったスタイリッシュな番組にしたい」と話した。

 

 新番組はTSKの情報番組としては初の時間帯で、型にはまらない企画を展開するなど、テレビとしても新たな試みが盛りだくさんだという。視聴者としては、どう生まれ変わるか楽しみであると同時に、ヤッホー!が育んだ温かな地域愛を引き継いでいってほしい。