新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期された東京五輪の開幕まで、残り100日となった。聖火リレーが始まり、白血病からの完全復活を目指す競泳の池江璃花子選手(20)が代表に決まるといった明るい話題もあるが、開催に向けた機運が高まっているとは言い難い。「第4波」が広がるコロナへの不安に加え、山陰両県をはじめ開催地以外の地方にとっては、意義が見いだせないのも一因だろう。

 「震災復興への貢献は東京大会の源流」|。東日本大震災発生から10年の節目を迎えた3月11日、東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長はこうメッセージを発表し、「復興五輪」と位置付ける大会の意義を改めて強調した。

 とはいえ、この意義は既に有名無実化している。延期が決まった昨年3月、当時の安倍晋三首相が「人類がウイルスに打ち勝った証しとして、来年の東京五輪・パラリンピックを必ずや成功させたい」と表明すると、復興五輪は色あせ、「コロナ克服」へと変質してしまった。

 開催地や被災地・東北を除く地方にとっての五輪の意義は、観戦で訪れる外国人客の増加による経済効果であり、東京五輪・パラリンピックを契機に交流を進めるホストタウン事業や事前合宿で受け入れる海外選手との国際交流が軸だった。

 ところが、ここでもコロナが水を差した。変異株の出現で厳しい感染状況が続き、組織委や政府、東京都など関係機関は、海外からの一般観客受け入れを断念。経済効果が期待できなくなった上、政府は事前合宿誘致を目指す自治体に対し、高度な感染対策を突き付けた。そのあおりを受けたのが、ホッケー・インド代表の誘致を進めていた島根県奥出雲町だ。

 政府の東京五輪・パラリンピック推進本部は手引書に、選手団が移動で使う航空機内で前後2列を空ける▽宿泊施設の貸し切り▽「選手村」に近い食事の提供|といった高いハードルを提示し、感染対策のマニュアル作成を要請。また、練習時に関係者以外を立ち入り制限するよう求めた。

 奥出雲町の勝田康則町長は、海外選手と町民の交流機会が持てない懸念がある上、「人的、施設的に加え、費用的にも厳しい状況がある」とし、誘致断念を表明せざるを得なかった。町は、合宿で使用するホッケー場の整備に5億4600万円を投じるなど、約5年前から受け入れ体制を整えてきただけに、さぞや無念だろう。他に少なくとも全国の4市町が誘致や受け入れを断念したという。

 共同通信社が10~12日に行った全国電話世論調査によると、今夏に東京五輪・パラリンピックを「開催すべきだ」と答えたのは24・5%にとどまり、「中止すべきだ」は39・2%を占めた。コロナの収束は見通せず、容認の声が急激に高まることはないだろう。

 それでも開催に向けた歯車は止まりそうにない。ならば、徹底した感染対策を求めた上で、開催の意義を見いだしたい。

 奥出雲町はホストタウンとしてインドと、スポーツや文化交流を継続する意向だ。またアイルランドの自転車競技チームの事前合宿地に決まっている益田市はトレーニングに最適なロードレースコースを、鳥取県は県産芝が国立競技場で使われていることを、それぞれ世界にアピールできる。ブランド戦略に意義を求めるのも一手だろう。