「顔パンツ」。マスクを外して顔をさらすことが、人前で下着を脱ぐのと同じ感覚であることを表現する言葉だそうだ。顔を隠すのに慣れ、新型コロナウイルスの感染対策で習慣化したマスクをこの先も外したくないという声を聞く。一方、海外では「脱マスク」の動きが加速し、米国では着用義務がなくなったと報じられた▼コロナ禍も3年目。現場で対応する保健所の関係者に聞くと、見える景色が変わってきたという。オミクロン株はデルタ株などに比べて感染力は高いが重症化率は低く、多くが軽症患者。従来のような徹底した感染者の洗い出しと行動制限に固執しても社会的に得られるメリットは少なく、保健所はパンク状態が続く▼島根県は大型連休中、政府や隣の鳥取県と一線を画し、帰省を含めた県外移動の自粛を県民に求め、一部の学校に一斉休校を要請した。厚生労働省が見直しの指針を出した感染者の洗い出しの範囲も堅持したままだ▼わずかな感染も許さない「ゼロコロナ」政策を続ける中国はどうか。都市封鎖や厳しい行動制限を行うものの人の流れを完全に止めることは難しく、封じ込めには至らない▼誰もが感染しないに越したことはない。ただ、この先もあくまで感染ゼロを追い求めるのか、個々が対策を徹底しながら共存する「ウィズコロナ」社会に転換するのか。ウイルスの変容を理解した上で再考すべき時だろう。(文)