体が徐々に動かせなくなる難病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症後に音楽仲間と結成したバンドで活動を続ける松本裕樹さん(59)=浜田市原井町=がCDアルバムを完成させた。ALSに対する思いを自作ブルースに乗せて歌い、懸命に音を紡いだ。9日に販売を始め、6月4日には益田市内の音楽ホールで記念ライブを開く。
(中村成美)
「オレという監獄に閉じ込められた感覚 屈強な門番に押し込められるイヤな感じ」ー。54歳で発症し、2年後にALSと診断された時の絶望感を表した歌詞だ。
診断後、松本さんは「若いころに打ち込んだギターで生きた証を残したい」と地元の音楽仲間5人でバンドを結成。初めてのCDは昨年6月から10カ月かけて5曲入りミニアルバム「Angels Love Supreme(エンジェルス ラブ スプリューム) No.14」を仕上げた。
病気でろれつが回りにくいため歌唱は任せるつもりで作詞したが、「その拙さがCDのコンセプトに合うじゃない」との仲間の励ましもあり、全曲を歌った。
4曲目の「Vagrant dog(ベイグラント ドッグ)~悪魔に咬まれた浮浪犬~」は、益田市遠田町の音楽ホール「サンムーンホール」を運営し1月にがんで他界するまで交流があった故・楠知幸さん(享年70歳)に歌ってもらう約束で書いた曲。冒頭で罹患(りかん)した恐怖を「やっぱりオレなのかオレ以外無理なのか」と描写し、最後で「オレで最後にしなよオレなら踊れるさ」と病を受け入れた今の心境を込めた。
新型コロナウイルス禍で制作が遅れたため約束は果たせなかったが、4月30日に同ホールで先行販売会と記念ライブを開催。用意した100枚は完売した。
1枚2千円(税込み)で、主に松本さんの交流サイト(SNS)で販売。山陰両県の楽器店などにも依頼する。収益はALSの新薬研究に全額寄付する。
同ホールでは6月4日午後7時から記念ライブも開く。「人前で歌う時だけは嘘みたいに体が動く。音楽活動は続け、病気に関係ない曲も作りたい」と次の構想も温めている。
曲の一部は松本さんのユーチューブチャンネルで公開している。