任期満了に伴う江津市長選と市議選(定数16)が22日告示、29日投開票の日程で実施される。今期限りで山下修市長(73)が引退し、新しいリーダーが誕生。ダブル選を前に、市が直面する課題を追った。 (江津支局・村上栄太郎)
江津市がかつて「工都」と呼ばれた面影を取り戻しつつある。地場の瓦産業の低迷や電子部品メーカー子会社の工場撤退など縮小を続けていた雇用の場が、製造業を中心とした企業誘致で息を吹き返してきた。
県営江津地域拠点工業団地は、2013年に64・6%だった分譲率が、15年に80%を超えた。16年度から21年度末にかけて造成工事を進め、約1・5倍となる33万1197平方メートルに拡大。さらなる受け入れを進める。
進出企業の困りごとの相談を続け、誘致後のフォローを欠かさず、工場の増設など設備投資が相次いだ。19~21年度だけでも122人分の雇用が新たに生まれた。
▽求人とミスマッチ
一方で、求人と雇用のミスマッチという課題が出ている。1月の市内の有効求人倍率(旧桜江町を除く)は1・58倍。職業別でみると、建設土木は10倍、製品製造加工は3・80倍と高く、一般事務は0・43倍と極端に低い。
このことは人口動態調査で20~24歳女性の転出超過が62人(19~20年度)と、全年齢男女別で最も高いことと無縁ではなさそうだ。市は、大学や専門学校を卒業後、習得した技能や知識を生かせる雇用の場が見つからず、Uターンにつながっていないとみる。
事務系の仕事を増やそうと4月、市地場産業振興センター(江津市嘉久志町)内にサテライトオフィスを設け、第1弾として3社が入居した。出雲市に支社を持つソフトウエア開発のアイティープロデュース(東京都)は、システムエンジニアとして20代の男女2人を雇用予定。今後も年間2人程度新規採用し、将来は支社設置も視野に入れる。
こうした市の仕掛けに、教育機関も期待を寄せる。女子生徒が6割を占める江津高校(江津市都野津町)の梶谷励進路指導部長(46)は「職業選択の幅が広がることは歓迎。江津にUターンしたいと考える生徒が一人でも増えるきっかけになる」と話す。
▽さらなる一手を
新型コロナウイルスの感染拡大により都会地の密集がリスクだと考えられ、地方に目を向ける企業が増えてきた。テレワーク需要の高まりによるIT関連企業の誘致は、全国で激化。江津市のサテライトオフィスには残り3社分のスペースがあるが、入居企業は未定だ。市は設置の後発組に入り、さらなる一手が求められる。
長年雇用政策に携わってきた市の釜瀬隆司顧問(68)は「ITにこだわらず、江津市内で取引がある企業を主要ターゲットとして誘致を進めたい。進出後の継続的な支援も必要だ」と強調。地元企業との連携、地域の特色を生かして、雇用の多様化に挑む。