1日にリニューアルオープンした島根県立美術館(松江市袖師町)は、目玉の浮世絵師・葛飾北斎(1760~1849年)展示室をはじめ来館者を引きつける新たな魅力が加わった。北斎の作品と記念撮影できる仕掛けやレストランが新装オープン。宍道湖沿いの立地を生かした山陰を代表する芸術文化の発信拠点として、国内外から多くの来館者を集めそうだ。(政経部・清山遼太)

葛飾北斎の作品を集めて新設した展示室は同館所有の北斎の世界的なコレクション約1600点から、1カ月ごとに展示内容を変えて約30点を公開する。また、水が題材の絵画を集めた「水辺の展示室」も新設。印象派を代表するモネの「アヴァルの門」やクールベの油絵「波」などが出迎える。
楽しい「北斎ガチャ」
新しい楽しみ方で注目したいのが、北斎作品と記念撮影できる「北斎ガチャ」。ロビーと展望テラスにあるQRコードをスマートフォンやタブレットで読み込むと、名作の風景版画「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」などがランダムで画面に表示され、作品の中に映り込んで撮影できる。各作品の解説もあり、撮影を楽しみながら北斎をより深く知ることができる。


ガチャは1日1回まで。1枚300円でプリントサービスも行う。オープン初日は早速、ガチャを試す来館者の姿が見られた。北斎の作品に魅了され、初めて来館した松江市西津田7丁目の主婦、浅倉友紀子さん(46)は「とてもおもしろい仕掛けだと思う。これまで知らなかった作品と出会うこともできた」と驚き、喜んだ。
子どもの絵本、アニメも
子どもたちが絵本約550冊に触れるコーナー「キッズライブラリー」にも新しい機能が加わった。津和野町出身の絵本作家・故安野光雅さんの「旅の絵本」シリーズをアニメ化した映像をモニターで常時上映する。美術鑑賞は退屈と感じがちな子どもも楽しめる仕掛けで、子育て世帯も来館しやすくなりそう。

息子を連れて訪れた出雲市西郷町の主婦、木村彩さん(36)は「これなら子どもも連れてきやすい。ぜひまた来館したい」と話した。
レストランが新装
館内のレストランも新しくなり「湖畔のレストラン RACINE(ラシヌ)」がオープンした。宍道湖や日本海の魚介類、地元産の肉を堪能できる。タイやスズキの魚介料理、島根和牛を用いたビーフシチューなどが人気を集めそう。


座席はカウンターを含め40席。宍道湖を眺めながらゆったりと食事を楽しめる空間が用意され、幅広い世代から人気を集めそう。営業時間は美術館の開館時間と同じ午前10時から日没の30分後まで。問い合わせは同店、電話0852(25)6562。
総事業費は14億円
1999年に開館した県立美術館は、鉄骨鉄筋コンクリート造り一部鉄骨造りの2階建て。延べ床面積1万2500平方メートルで、新型コロナウイルス禍前の2019年は30万7千人が来場した。21年5月から休館し、総事業費約14億円を投じて、金属製のつり天井をグラスファイバー製の膜天井に更新した。