浜田市三隅町出身で女性表現に革新をもたらした日本画家石本正氏(1920~2015年)の足跡をたどる「生誕100年 回顧展 石本正」が、松江市袖師町の島根県立美術館で開かれている。大規模な回顧展は全国初で、会場には舞妓(まいこ)や鳥、花などを題材にした多彩な約180点が並び、石本氏の足跡を示す。展示品から珠玉の5点を紹介する。
「ポンテ・ベッキョ」 1965年(島根県立美術館蔵)
現代における「日本画」を制作する意識とともに、その絵画は世界と対等に存在し得る「日本の絵画」であるために、伝統技法に縛られるのではなく縦横無尽に、イタリアのフレスコ画や日本の中世絵巻などの優れた表現を咀嚼(そしゃく)し、昇華して作品化してゆくと、石本正氏は語っている。
「五条坂風景」1950年(浜田市立石正美術館寄託)
立体物の処理の仕方はキュビスムを意識し、理論に陥らず光と影の美しさもたたえている点で、本人が納得した作画であったことがうなずける。
「桃花鳥」1960年(東京国立近代美術館蔵)
人物もしくは花鳥を描いてもきれいごとに終始する保守的な日本画の範疇(はんちゅう)を超え、生態を捉えている点に現代性を認められ、石本正氏にしか描き得ない世界として評価された。
「青衣立像」1979年
女性に託した石本正氏の仏像への意識が顕在化された作品。
「裸 婦」1967年(個人蔵)
ヌードモデルは別にいることから、舞妓の裸は顔と身体を絵の中で組み合わせることが前提であり、外見のリアリティーよりも石本正氏の女性観を反映しようとしたことが分かる。
【石本正氏 略歴】
いしもと・しょう 1920年、島根県那賀郡岡見村(現・浜田市三隅町岡見)生まれ。浜田中学校(現・浜田高校)を経て、京都市立絵画専門学校(現・京都市立芸術大)で日本画を専攻。47年の第3回日展に初入選。59年ごろから舞妓や裸婦をモチーフにした作品を発表し、女性美の表現を追求した。71年に第21回芸術選奨文部大臣賞を受賞した後は全ての賞を辞退。京都市立芸術大、京都造形芸術大(現・京都芸術大)の教授を務めた。2015年、95歳で死去。
【開催案内】
◇主 催 山陰中央新報社、島根県立美術館、日本海テレビ、NHK松江放送局、朝日新聞社、SPSしまねグループ
◇特別協力 浜田市立石正美術館
◇会 期 5月24日(月)まで
◇会 場 島根県立美術館 (松江市袖師町)
◇開館時間 午前10時から日没後30分まで(展示室への入場は日没時刻まで)※火曜日休館(5月4日は開館)
◇入場料 オンライン決済券一般900円。当日券は一般1150円、大学生700円、小中高生300円
◇問い合わせ 島根県立美術館
電話0852(55)4700