風もなく何事もなく散る桜知らない世界気持ち知りたい      松 江 須山 吉雄

  【評】理屈では桜の散るのに不思議はないけれど、じっと見ていると知らない世界の 出来事のよう。それを見ている、人の心が不思議なのです。桜の気持ちとは、つまり、 自分の心の在りようのこと。

ザクザクとキャベツ刻みてひとり居の予定表なき一日はじまる   雲 南 栂  満栄

  【評】一読さみしい歌のようですが、初句「ザクザク」には、ひとり居を思うままに 楽しもうという、気概さえも感じさせる力強さがあります。予定がないことは...