個体数が減少するニホンヒキガエルの産卵地の保全に向け、島根県邑南町内でDNA調査が始まった。広島市安佐動物公園の元副園長の桑原一司さん(72)らが手がけ、瑞穂、羽須美両地域で消滅が進むものの、石見地域の別の産卵地に生息する個体とDNAが同じであれば、移して育てることで復活する可能性があるという。
西日本を中心に生息するニホンヒキガエルは体長8~17センチで、2~3月にかけて池や湿地でひも状の卵塊を産む。森林伐採や河川開発などの影響で急速に減少しており、広島、岡山両県はレッドデータブックの絶滅危惧種2類に指定する。
島根県は未指定だが、邑南町内は20年ほど前に全域で確認された産卵地が、ほぼ消滅した。同町阿須那と大林の境にあった徳前峠は、農道脇にできた水たまりに毎年5、6個の卵塊が見られたが、農道改修工事で生息環境が変わり、害虫の大量発生などで個体数が減少。2018年以降は産卵がなくなった。
保全に取り組む桑原さんや町内の有志は、徳前峠から数百メートル離れた阿須那地区の水辺で発見した、オタマジャクシは徳前峠の生き残りとみており、DNAが同一であれば、徳前峠の産卵地の復活は可能とみる。
3、4月にかけて町内全域の成体やオタマジャクシ約30匹からDNAを採取。京都大の研究者らに送って調べている。半年ほどで結果が分かるという。桑原さんは「同じ遺伝子であればいなくなった場所での飼育は可能。なんとか復活に向けて取り組みたい」と話した。
(糸賀淳也)













