「国際的な詐欺組織の出先が、日本に上陸している」。今秋、こうした情報がもたらされた。驚いた私たちは取材を開始。問題視されたのは、カンボジアの華人系企業「プリンス・ホールディング・グループ」だ。2025年10月14日、米国と英国がプリンスを制裁したことで、世界的な注目を浴びた。オンライン詐欺や人身売買、資金洗浄に関与した疑いだった。さらに韓国や台湾でも現地子会社に対して強制捜査や税務調査が進行している。取材を進めると、プリンスグループは日本国内にも関連会社を複数設立していたことが判明した。さらに、組織の首領が東京に一時潜伏していたとみられることも分かった。異形の犯罪組織はどうやって日本社会へ進出を果たしたのか。私たちは追跡を始めた。(共同通信=武田惇志、角田隆一)

 ▽急速に成長、背景に詐欺の強制労働

 「アジア最大級の犯罪組織」。米政府はそう、プリンスグループについて表現した。

 グループを率いるのは中国・福建省出身で、カンボジア国籍を取得したチェン・ジー(陳志)会長(38)。カンボジアで不動...