参院選の大きな争点は、暮らしを圧迫する物価高への対応と、新型コロナウイルス禍からの景気回復をいかに確かにするかだ。両方に効果的なのが家計を温める賃上げだが、与野党の公約は最低賃金の引き上げや税制による支援などにとどまり力不足が否めない。各党は選挙戦を通じて、より明確な所得増の道筋を有権者へ示すべきだ。

 4月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)が消費税率引き上げの影響を除いて13年半ぶりの上昇率を記録するなど、春から物価高騰が顕著になっている。

 原油や小麦は以前から値上がりしていたが、ロシアのウクライナ侵攻で加速。その影響で電気・ガスのほかパンや食用油など幅広い食品が値上がりし、食費の支出割合が多い中低所得層の負担感はとりわけ重い。

 家計への支援は本来、これらの層を対象に実施することが望ましい。

 選挙直前のこの状況に危機感を強めたのが自民、公明の与党だ。岸田文雄首相は「物価・賃金・生活総合対策本部」を設置。21日の初会合では電気代の負担軽減や、食料価格に響く肥料の値上がり緩和策を表明した。有権者へのアピールを意識した内容と言えよう。

 物価高・家計支援で与野党の違いが鮮明なのは消費税の扱いだ。与党の現状維持に対し野党は立憲民主、日本維新の会、共産、国民民主の各党が減税を、社民党は3年間ゼロ、れいわ新選組は廃止を主張している。

 消費税はいわゆる「逆進性」があり、低所得の世帯ほど負担割合が大きい。このため減税には一定の効果が見込めよう。一方で1%の減税により2兆円超の税収が失われる。年金など社会保障の中核財源である消費税を変更することの長短を、各党は丁寧に有権者へ説明する責任がある。

 家計と企業活動の双方に影響の大きい燃油高対策では、与党が補助金でガソリンなどの価格を抑える激変緩和策の継続を強調。立民、維新、国民は「トリガー条項」の凍結解除を含む燃油減税や購入補助を訴える。

 ウクライナ危機の終息が見えず原油高は長期化の様相にある。燃油高騰を抑える補助や減税には巨額の公費が必要な上、レジャーでの利用者にも恩恵が及びガソリン需要をかえって高める矛盾をはらむ。有権者受けを優先して軽視が許される問題ではなく、対策はあくまで限定的とすべきだろう。

 日本の物価上昇率が米欧より低いのに打撃なのは、賃上げが追い付いていないためだ。賃金は30年間ほとんど上がっておらず、景気低迷の大きな要因になっている。

 にもかかわらず各党の対策は、最低賃金の引き上げのほかは中身に乏しい。岸田首相は金融資産の運用所得倍増を掲げるが、賃上げに決め手を欠き、論点をすり替えたとしか映らない。

 上場企業で最高益や配当など株主還元の拡充が相次いでいる点を考えれば、取引先の中小企業と利益を適正に分かち合い、賃上げの形で従業員への還元を促す政策の一手が今こそ求められる。

 円安が物価高を悪化させている点を踏まえれば、アベノミクスの継承である日銀の大規模な金融緩和が問われて当然だ。長年の超低金利は円安に加え、財政規律の緩みによる国の借金急増をもたらした。有権者はその弊害に目を向ける時だ。