短歌 寺井淳選
ひと葉ずつ手摘みの茶の葉しづめたり蒸す揉むねぢる祖母に習ひし 出 雲 花田 敦子
【評】日常になっている人には当たり前のことでしょうけれど、大げさに言えば、ゆかしい生活文化の伝承。祖母からというところが味わいです。次は自身のお孫さんに、ですね。
川の面に楝の花の揺るる見ゆ止めてと言へぬ助手席のわれ 松 江 土井 郁子
【評】楝(あふち)は万葉の時代から歌の題材になっています。「逢ふ」という意味を響かせながら、ここでは逢いに行けないもどかしさが、下句でうまく表現されています...