離婚後も父母の双方が子を養育する親権を持つ共同親権を導入するかどうか、議論がヤマ場を迎えている。現行民法は親権について「婚姻中は父母が共同して行う」と定めているが、離婚する場合は、どちらか一方を親権者と決めなければならないと規定。単独親権となるため、離婚を巡る協議や裁判で激しい親権争いが繰り広げられる。

 自民党のプロジェクトチームは家族の分断を生じさせない法制を求めるとして、法相に共同親権導入を提言。法相の諮問機関・法制審議会は離婚を巡って相次ぐ養育費不払いの解消や、子と離れて暮らす親の面会交流促進も含め、8月中にも民法改正の中間試案をまとめ、意見公募を行う。

 海外では離婚後の共同親権が主流。離婚した父母が共に子育てに責任を持てば経済的にも安定し、子の利益につながるとの考え方からだ。ただドメスティックバイオレンス(DV)や児童虐待など複雑な事情があると共同親権を取り入れてもかえって被害が継続、拡大したり、子に関わる重要な決定が滞ったりするという懸念は根強い。

 法改正に当たり、子の利益を最優先するのは言うまでもない。そのために何ができるかが問われている。父母が抱える事情によって共同親権か単独親権を選べるようにするなど、実態に即して制度設計を進め、国や自治体によるサポートを一層拡充する必要がある。

 厚生労働省の統計によると、親の離婚を経験した未成年の子は1960年代、年間8万人前後で推移していたが、75年に10万人を超え、2000年には27万人近くに達した。その後、減少傾向にあるとはいえ、19年は20万5972人だった。

 協議離婚でも、裁判による離婚でも、母親が親権を持つケースが8割以上を占め、圧倒的に多い。親権は未成年の子について親が身の回りの世話や教育をする権利と義務で、住む場所の指定や財産の管理などを担う。

 必要な範囲で子を戒めることを認める懲戒権もその一つだが、法制審は虐待防止のため削除した上で、体罰禁止を明文化した民法改正要綱を法相に既に答申している。

 離婚後の単独親権は子に関する決定がしやすい半面、親権を持てなかった親は子と会うことが難しくなってしまう。養育費の不払いも目立つ。さらに欧州連合(EU)は、日本国内では国際結婚が破綻した場合に日本人の親が子を一方的に連れ去り、面会も厳しく制限しているとして、連れ去り禁止などの対応を日本政府に要請している。

 法務省が20年4月に公表した調査結果によると、米国や英国など24カ国のうち、22カ国が離婚後の共同親権を採用。その範囲を教育などに限定したり、父母の合意で単独親権とすることができたりと、運用は国ごとに異なっている。日本のように単独親権のみはインドとトルコだけだった。

 しかし共同親権を導入すれば全ての問題が解決するというわけではない。自治体が離婚届を受け付ける際に、養育費支払いや面会交流について父母がきちんと合意しているかをチェックし、助言や提案をするなどの仕組みも必要だろう。ろくに取り決めもせずに離婚し、いがみ合いを続ける例が後を絶たない。

 加えて離婚に際し、子の意見をくみ取り、その後に反映させる方策もしっかりと検討したい。