鳥取砂丘(鳥取市)の一角にワサビが自生する湧水地がある。なぜ、山あいの渓流で生育する植物が-。鳥取東高校(同市立川町5丁目)の理数科生5人が、課題研究のテーマとして調べ、水温の変化が小さい地点ほどよく育っていることから、気温の影響を受けにくい地下の構造などが要因との研究成果をまとめた。 (岸本久瑠人)
ワサビが自生するのは砂丘内に点在する湧水地の中でも最大の鳥取大乾燥地研究センター(同市浜坂)の敷地内。5人は、2年生だった2021年6月から22年1月までの間、同センターの協力も得て、横38・3メートル、縦最大10・7メートルの湧水地内の26地点で、週1回の授業ごとに手分けをして水温、水質などを調べた。
その結果、水温の違いから複数の地下水が流入していることを突き止めた。調査期間を通じて水温の変化が小さい地点ほど生育がよく、変化が大きい地点と比べ、葉の平均面積が最大約2倍だった。
水温の違いがある要因として雨水や雪などが解けてたまる、湧水地の地下構造も探った。深いところに火山灰層がある場合は水温が時間をかけて一定化されるが、浅いところにある場合は気温の影響を受けやすく、水質の変化が大きくなることが分かった。
図解付きでまとめた研究成果は、研究者らでつくる日本地球惑星科学連合の高校生ポスター発表(5月)で、2位相当の優秀賞を獲得。指導に当たった宮脇進教諭は「地道な作業が研究に生きることを実感したと思う」と、8カ月にわたって根気よく調査活動を続けた生徒たちをたたえた。
「乾燥地」に興味を持ち大学でも研究しようと考えている竹田大起さん(17)は「砂丘ワサビとして特産化できたら面白そう。広まれば、さらに鳥取の知名度が上がりそうだ」と思いを膨らませている。