梅原淳氏
梅原淳氏

地方鉄道の行方
 ~島根・鳥取の取るべき行動は

   地元の積極的な関与を

 山陰中央新報社の米子境港政経クラブ、島根政経懇話会の定例会が6、7の両日、米子、松江両市内であった。鉄道ジャーナリストの梅原淳氏(57)が「地方鉄道の行方~島根・鳥取の取るべき行動は」と題して講演し、JR木次線など赤字ローカル線の存続に向けた方策を示した。要旨は次の通り。

 1日当たりの鉄道利用者数を、コロナ禍前の2018年度と20年度とで比較すると、JR西日本管内は524万人から390万人へ26%減となった。このうち新幹線は59%も減少。新幹線の収益で地方の赤字路線を補填(ほてん)する構図が、成り立たない状況だ。

 コロナ禍で落ち込んだ利用は現在、在来線は7割まで回復し、通勤通学の需要が戻ってきた。JRは定期券を同じ距離を利用したときの料金より5割ほど割り引いており、他の私鉄と比べて割合が大きい。割引率の削減などで、収支を改善する余地は残されている。

 木次線は、自分の推計では、宍道―出雲横田が1日に520人、出雲横田―備後落合が27人程度の利用だと思われる。厳しい状況だが、自治体の負担や運賃の値上げで存続できる可能性が、まだあると考えている。

 利用が少ない出雲横田以南は、全国的に希少な「3段式スイッチバック」や日本最大級の2重ループ橋「奥出雲おろちループ」などがあり、自動車で見に来る人もいる。これらを生かした観光列車を走らせるといった手もある。

 地方路線を守る決定的な方法は見つかっていないが、時代に即した姿に変わっていくことが必要だ。弾力的な運賃の値上げもその一つ。特に木次線は地元が積極的に関与していくことが重要だ。

(柴田広大、清山遼太)