沖縄県知事選は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設反対を訴えた現職の玉城デニー知事が、移設容認を表明した佐喜真淳元宜野湾市長らを破り、再選を果たした。
知事選では、新型コロナウイルス感染症で打撃を受けた県経済の立て直しや子どもの貧困対策なども問われ、基地移設の是非だけが争点だったわけではない。政府の経済支援を考えれば、政権与党の自民、公明両党が推薦した佐喜真氏が有利とみられる材料もあった。
それでも立憲民主など野党各党が推薦した玉城氏が得票率で10ポイント近い差をつけて勝利したのは、基地移設への強い反対と、基地問題に経済支援策を絡める政府を信任できないという沖縄県民の意思表示と言える。
沖縄では、移設反対を掲げた翁長雄志氏が2014年に知事に当選。翁長氏の急死に伴う18年の知事選でも反対を訴えた玉城氏が勝利した。19年の県民投票では反対が7割超を占めた。県民は繰り返し「移設ノー」の意思を示している。そして今回の知事選だ。
再選された玉城氏は「県民の思いは1ミリもぶれていない。建設工事は直ちにやめるべきだ」と強調し、辺野古移設に代わる解決策を見いだすための対話を政府に求める考えを示した。
沖縄が日本に返還されて50年が経過した今も、在日米軍専用施設の約7割が集中する。政府は、過重な基地負担の解消を訴える県民の声を今度こそ真摯(しんし)に受け止め、対話のテーブルに着くべきだ。
知事選は第2次岸田改造内閣発足後初の与野党対決型の大型選挙だった。佐喜真氏は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)関連団体の会合への参加を認めており、選挙結果には旧統一教会問題も影響したとみられる。岸田文雄首相は政権の立て直しを迫られている。
知事選は当初接戦になるとの予想もあった。沖縄では今年1月に名護市長選で移設反対を掲げた候補が敗北。7月の参院選は移設反対の現職が移設容認の自民党新人を破ったが、3千票弱の僅差だった。翁長、玉城両氏を支えてきた保守と革新を超えた「オール沖縄」の枠組みも弱体化が指摘されていた。
一方、政府は翁長知事時代から辺野古移設工事を進め、玉城氏の初当選後に埋め立て土砂の投入を開始した。「もはや後戻りできない」と既成事実化する狙いだろう。前回知事選では移設への賛否を明らかにしなかった佐喜真氏は今回、「容認」を表明、工期を短縮すると訴えた。
政府は経済支援でも、23年度予算の概算要求で沖縄振興費を前年度から約200億円と大幅減額した。玉城県政への露骨な締め付けだろう。
共同通信社の出口調査では、投票で重視した政策は「経済の活性化」が最も多く、「基地問題」を上回った。その中で玉城氏の再選が支持された現実は重い。基地移設工事を強行し、それに振興予算を関連付ける政府の手法は強引で、論外だと言うしかない。
辺野古移設を巡っては、埋め立て予定海域に見つかった軟弱地盤の改良に向けた防衛省の設計変更を玉城知事が不承認とし、法廷闘争になっている。これ以上、国と県の対立を深刻化すべきではない。「辺野古移設が唯一の解決策」という思考停止から脱却するよう政府に求めたい。





 
  






