2022年8月26日の午後3時前、西に傾く残暑の陽光がニューヨークの国連本部を照らす。決裂の予兆となる異変が現れたのはこの時だった。

 「最後の全体会合は午後3時から4時半に変更されました」。最終日を迎えた核拡散防止条約(NPT)再検討会議の協議開始が1時間半遅れとなる知らせが、関係者に一斉に届き始めた。紛れもなく悪い知らせだった。

 この1時間前、国連総会議場に向かう南米チリの代表団顧問ウィリアム・ポッターは会議成功への楽観論を示しながら、取材にこう語っていた。

 「最大の鍵を握るのはロシアと...