将来結婚する意向がある未婚者が希望する子どもの数は男性で平均1・82人、女性が同1・79人といずれも過去最少となり、女性では初めて2人を割った。国立社会保障・人口問題研究所の2021年6月時点の出生動向基本調査で分かった。
日本の少子化の大きな原因は未婚・非婚の増加だが、結婚の意思がある未婚者も男女ともに減った。家族をつくり、子どもを産み育てようとする若い世代の意欲は一層減退している。「国難に立ち向かう」とした政府のこれまでの少子化対策は実効が上がっていない。抜本的に見直すべきだ。
結婚の意向がある18~34歳の未婚者が欲しい子どもの数は、男女ともほぼ全ての年齢層で前回15年調査から減少。中でも結婚を意識する年頃の30代前半の男女、20代後半の女性で減り幅が大きい。結婚の意思を持つ未婚の男女も4~5ポイント減り、その3人に1人は交際相手がいない上に交際も望んでいなかった。
一方で夫婦に聞くと理想の子どもの数は2・25人、実際予定する数は2・01人だった。結婚すれば2人程度の子どもが生まれるのだ。ただ理想の人数を諦める理由は「子育てや教育にお金がかかり過ぎる」が最多だ。
新型コロナウイルス禍で仕事が減ったり、失われたりして若者は経済的不安に襲われた。それが結婚、出産、子育てをためらわせたのではないか。
コロナ感染への不安で妊娠を控える傾向もあり、厚生労働省の人口動態統計では22年上半期に生まれた赤ちゃんの数は前年同期比5・0%減の38万4942人となった。このままでは今年の出生数は統計開始以来初の80万人割れになる。国の想定より8年も早く少子化が進む深刻な事態だ。
希望しても認可保育所などに入れない待機児童も4月時点で2944人と過去最少になった。保育の受け皿拡大、コロナ禍による利用控えもある。だが保育所を利用する児童数は前年から約1万2千人減と初めて減少に転じており、少子化急進の影響が大きい。各地で保育所の定員割れが起きており、待機児童ゼロを目指した政府の保育政策も「量から質へ」の転換点を迎えたと言える。
少子化が加速すると、元のペースに戻すのは難しい。少子化は社会保障、経済成長を阻害するだけではない。岸田政権は防衛力強化を掲げ、自民党が国内総生産(GDP)比1%程度の防衛費の倍増を求めている。一方で自衛隊を支える隊員は近年、定員割れが続く。いくら予算を増やしても、少子化が進めば防衛力強化は絵に描いた餅になりかねない。
対策はどう見直すべきか。先進国で少子化に歯止めをかけたお手本とされるフランスは、家族手当や保育の充実に加え、出産・子育てと就労を両立させやすくする環境整備に注力した。家族関係の財政支出は対GDP比で日本の約2倍に上る。
全てが日本社会にもマッチするとは限らないが、若い世代の収入が安定し結婚、子育てに前向きになれる社会を実現するヒントはあるはずだ。
もちろん子どもを産み、育てるには家庭内での夫の育児参加も欠かせない。10月からは妻の産休期間に夫が取得できる「産後パパ育休(男性版産休)」の制度がスタートした。企業側の協力も当然必要だ。チルドレン・ファーストへ社会全体で意識改革を進めたい。